生保・損保・代理店の正念場#15Photo by Yoshihisa Wada

カルテル問題で対応に追われた東京海上日動火災保険。業界盟主である同社は、率先してあしき業界慣行から決別することが求められている。特集『生保・損保・代理店の正念場』(全31回)の#15では、4月に就任した城田宏明社長に、この難局にどのように立ち向かおうとしているのか、話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)

問題はお客さま本位とのずれ
企業風土の改革を徹底する

──カルテル問題が引き起こされた原因をどう分析していますか。

 保険料調整行為は、独占禁止法のリスクと、お客さま起点で業務を行うことの二つの認識が不足していたことが原因です。保険料の背景にある自然災害の激甚化、それによる保険料率の引き上げについて、お客さまにご理解いただくように努力を尽くす必要がありました。ですが当社の常識をベースとした行動が優先され、本来あるべきお客さま本位の行動とずれが生じていました。

 ビッグモーターの問題については、当社は毅然と対応していたという自負はあるのですが、不正請求を見抜けずに、お客さまに入庫誘導を続けて被害を拡大させてしまいました。真摯に反省したいと思います。

──業務改善計画のポイントはどこにあると考えていますか。

 一つは当社に根付く業界慣行の見直しです。お客さま起点の業務プロセスに見直します。政策株、代理店に対する本業支援、社内での目標の在り方、人事制度などを見直していきます。

 もう一つは、お客さまの声を踏まえ、生かす経営をしていくこと。お客さまに満足いただける行動とは何なのか、分析と実践を繰り返していきます。4月1日付で「お客様起点推進委員会」を設置しまして、社長である私が委員長になっています。全社員一丸となって、企業風土としてお客さま起点の業務が定着するまで、徹底していきます。

大手損害保険会社4社の中で、業界盟主ともいわれる東京海上日動火災保険。2024年4月に就任した城田宏明社長は22年に執行役員になったばかりで、33人抜きの大抜てきだった。直前は営業企画部長として、代理店への営業施策を統括していた。この難局をどのように乗り切るのか。次ページで詳しく話を聞いた。