経営の中枢 CFOに聞く!Photo by Yoko Akiyoshi

医療機器大手のテルモが波に乗っている。2024年度に売上高1兆円を初めて突破し、営業利益率でも中期目標の20%を射程圏内に捉える。テルモは成長を加速させるべくM&A攻勢をかけており、今年8月には英国の医療機器メーカーを約2200億円で買収すると発表した。好調を支える萩本仁経営役員CFO(最高財務責任者)は、ソニーからテルモに転じた異色の経歴の持ち主だ。長期連載『経営の中枢 CFOに聞く!』の本稿では、萩本氏に買収案件の選定条件や、投資家の声を経営に生かす秘訣を明かしてもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)

テルモが営業利益率20%を射程圏内に入れるも
「2200億円買収」の発表後、株価は伸び悩み

――2024年度の一時費用を除いた営業利益率は前年度比2.3ポイント増の17.5%でした。26年度までの中期経営計画の目標に掲げた20%への手応えは。

 ここまでは順調にきています。地政学リスクなど、リスク要因はありますが、大きく利益率を下げるようなものはないと考えています。

 中期経営計画の目標はあくまで通過点で、上限だとは思っていません。

――5万点を超える製品ラインアップをそろえています。膨大な製品や半製品の在庫をどうやって管理しているのでしょうか。

 全ての製品のサプライチェーンを最初から最後まで人力でカバーするのには限界があるので、需要予測にAIを活用し始めています。AIによる在庫のシミュレーションを強化していきたいですね。

 キャッシュフローの観点では在庫を減らすに越したことはないのですが、製造リードタイムや製品の回転率はバラバラなので、全ての在庫を一律に減らすのではなく、今まで以上にメリハリをつけていくことになります。

――今年8月、移植用臓器の保存・輸送用機器を手掛ける英国のオルガノックス社を約2200億円で買収すると発表しました。

 金額はかなりインパクトがありますが、マネージできる範囲内の買収金額だったと思っています。投資家の方々からは「よくこんなに良い会社を見つけたね」といった好意的な評価を頂けたので、理解を得られたと感じています。

――買収公表後、株価が伸び悩んでいるようです。投資家の方々の好意的な受け止めと、実際の株価がリンクしないように思うのですが……。

次ページでは、萩本仁CFOが株式市場からの声を経営に生かす秘訣を開陳するとともに、テルモ経営陣が共有する「買収の5条件」を明かす。五つの条件は、どの業界のM&Aにおいても納得感のあるものばかりだ。さらに、萩本氏にかつて合弁会社を運営していたオリンパスとの今後の関係についても聞いた。テルモとオリンパス、国内医療機器“2トップ”が再びタッグを組む可能性はあるのか。