![保険大激変 損保の構造的課題が生保にも飛び火!#3](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/9/0/650/img_90de51b593a349d766abb90ac6e78f4b296808.jpg)
自動車ディーラーなど損害保険の販売・契約でシェアの大きい代理店に対して、損保会社が過度な便宜供与を行ったり、損保会社からの出向者が顧客情報を漏えいしたりと、問題噴出の損保業界。日本損害保険協会の会長であり、業界トップの東京海上日動火災保険社長の城田宏明氏は、現状をどう捉えているのか。特集『保険大激変』の#3では、代理店制度で噴出している問題について、城田社長の見解を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫、構成/ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)
代理店は重要な事業パートナー
反省し、改めるところは改める
――2024年12月に公表された金融審議会の保険ワーキンググループ(WG)の報告書をどのように受け止めましたか。
WGではさまざまなテーマについて議論してもらいました。当社としては、社会やお客さまの常識と当社や業界の常識との間に多くのずれが生じていたことを改めて重く見ています。
WGの報告書では、損害保険業界における一連の問題に対する再発防止策や、信頼回復、健全な発展について多くの示唆をいただいたと思っています。日本損害保険協会では一連の問題の再発防止や課題解決に向けて各社、ガイドラインの策定などを進めています。協会長の立場としても、議論内容や今後のパブリックコメントを見て、こうした取り組みを加速させ、実効性のあるものにしたい。当社でも協会が策定した各種ガイドラインの趣旨を踏まえて、関連する社内ルールの整備を必要に応じて進めていきます。
(編集部注:金融審議会の報告書とは、24年12月25日に公表された金融庁「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」報告書)
――金融庁は25年1月、トヨタ自動車の直営販売会社トヨタモビリティ東京と中古車販売大手グッドスピードに対して、保険業法に基づく業務改善命令を出しました。こうした兼業代理店に対して、保険会社として今後どのように関わっていくのでしょうか。
2社のような兼業代理店は、本業に付随して保険商品や事故対応などをワンストップで提供するビジネスモデルです。顧客利便性の向上や被害者救済など、不可欠な役割を担っています。
ただし、代理店としてお客さま本位であることが大前提です。仮に利益のみを追求しているとか保険募集の品質をおろそかにしているのであれば改めなければならないし、もし改めることができないなら、保険会社としてはパートナーシップを維持することは難しくなると考えています。
兼業代理店の存在は重要だと思っています。まずは指摘された内容を受け止め、われわれの指導や教育が不足していたところなど反省すべきところは反省し、お客さま本位のビジネスモデルを互いに議論して築き上げたいと思っています。
もっとも、専業か兼業か、規模の大小などにかかわらず、代理店はお客さまに適切な保険商品やサービスを提供していく役割があり、保険会社にとっては大切なパートナーです。また保険会社は、代理店に対して保険募集に関する業務の監督・指導をする立場です。
そういう関係でありながら、保険会社が過度な便宜供与を行っていた結果、監督・指導が不十分だったケースがあったことは事実です。保険会社と代理店のなれ合いやもたれ合いの構造を改めて、本業協力や二重構造の解消、代理店の自立化を進め、保険に関する業務の品質向上を一体となって推進していきます。これが今、保険会社であるわれわれに求められていることだと思っています。
――店舗ごとに特定の損保商品を推奨する「テリトリー制」の根拠となる、保険業法施行規則にある「ハ方式」の見直しについて伺います。
保険業法施行規則にある「ハ方式」とは、代理店が特定の損保会社の自動車保険を推奨する販売方式だ。損保の代理店制度においてあまたある問題の中で、代理店の比較推奨販売をゆがめる原因の一つだと指摘されているルールでもある。24年12月の日本損害保険協会の記者会見で、城田社長はそれを見直す趣旨の発言をし、損保業界と代理店各社の間で大きな話題となった。次ページではその真意と共に、損保各社が行ってきた代理店への出向や、一連の改革がきっかけで噴出している代理店からの不満をどう受け止めているかについて、話を聞いた。