どちらがというよりも、JALが頑張っているなと思うのは、Meal Skip Optionが社会貢献プログラムにつながっている点ですかね。スキップオプションを申請すると、食品廃棄削減に協力したということでその分、JALからプログラムに一定額が寄付されて、子どもの学校給食に充てられるそうです。このあたりはもっとPRすればいいのにと個人的には思います(編集部注:「TABLE FOR TWOプログラム」といい、23年度は給食約10万食分の寄付につながった)。

 それからこれは日系2社に限りませんが、プラスチック製品の使用を減らすために、ほぼ全てのエアラインがカトラリー(フォーク、スプーン、ナイフなど)を木製に変えています。昔は機内食のカトラリーは金属製で、軽量化のためにプラスチックに移行しましたが、今では木製や紙製へシフトしています。

 究極の環境配慮は、「食べられるコーヒーカップ」でしょうか。ニュージーランド航空が、特殊なビスケット生地でつくったコーヒーカップを試験導入したことがあります。コーヒーを飲んだら、カップを食べることができて、スイーツ代わりにもなります。

「ビーフ・オア・チキン」は死語に?ANA・JALで変わる機内食トレンド【専門家が解説】写真:ニュージーランド航空
「ビーフ・オア・チキン」は死語に?ANA・JALで変わる機内食トレンド【専門家が解説】写真:ニュージーランド航空

――斬新ですね。一方で、豪華なメニューを突き詰めた機内食で、注目しているものはありますか。

 シンガポール航空がプレミアム・エコノミークラス以上の上級クラスで導入している「ブック・ザ・クック」ですね。これも事前予約でメーンを選択する仕組みの一つですが、とにかくその種類が豊富なんです。

 一般的に国際線のメニューの更新は3カ月に1回程度で、メーンは2~3種類の中からチョイスします。が、シンガポール航空のこのサービスは、かなりフレキシブルで選択肢が多いのが魅力。正直、ANAとJALはこのレベルまでは到達していないと感じます。

「ビーフ・オア・チキン」は死語に?ANA・JALで変わる機内食トレンド【専門家が解説】写真:シンガポール航空

――機内で出るドリンクにもトレンドはありますか。

 ノンアルコール・ドリンクのラインナップが充実したことが、大きな変化です。今は日本の大手ビール会社も「スマドリ」といってテレビCMを打つくらい、「お酒を無理に強要しない」風潮がありますよね。

 若者を中心にお酒を飲まないライフスタイル「ソバーキュリアス」が世界的に浸透したこともあり、ANAもJALもドリンクのメニュー表に「ソバーキュリアス向けのおすすめのドリンク」などと書くようになったんです。これは、一昔前では考えられなかった。

 コロナ禍がそうした風潮を後押ししたこともあり、各エアラインがノンアルコールタイプのスパークリングワインを搭載するようになりました。これが意外と美味しいんですよね。

「ビーフ・オア・チキン」は死語に?ANA・JALで変わる機内食トレンド【専門家が解説】JALの国内線ファーストクラスで提供されるノンアルコールのシャルドネスパークリング Photo by Rikiya Okui
「ビーフ・オア・チキン」は死語に?ANA・JALで変わる機内食トレンド【専門家が解説】奥井力也(おくい・りきや)/機内食ジャーナリスト。1996年に旅行系ホームページを立ち上げ、2003年に「機内食ドットコム」を開設。著者に「みんなの機内食」(翔泳社)など。