1日800食もの大量のランチを
無料で連日配ることができる仕組みとは?

 ワールド・セントラル・キッチン(通称WCK)とは、2010年にセレブリティ・シェフのホセ・アンドレス氏が創設した非営利団体で、被災地や紛争地にいち早く食事を届ける「食」に特化したボランディア団体だ。その活動資金は一般人からの寄付が中心で、ガザなどの紛争地でも食事を提供している。

 しかし、LA火災の現場から、車で1時間ほど離れたロングビーチでのレストラン業務で毎日忙しいナヴァラさんが、なぜ1日800食もの大量のランチを無料で連日配ることができるのか?

「支援ランチひとつにつき、うちには12ドルの資金がWCKから支払われる仕組みなんだ」と彼は言う。

 つまり、支援用ランチを作って配るための食材や人件費やガソリン代をWCKが負担することで、ナヴァラさんは資金を調達する必要なしに、調理と配布のボランティアに専念できるというわけだ。

 スタッフ4人で早朝から厨房で支援ランチ用の調理をし、メニューは手に入る材料によって変える。シュリンプや鶏肉などヘルシーで栄養価の高いタンパク質を必ずメニューに入れるようにしている。

「地元のファーマーズ・マーケットの農家が、メキシカン・スクワッシュやブロッコリーを箱ごと寄付してくれた日には、温野菜料理を作るし。避難民に圧倒的な人気があるのはマンゴーやオレンジなどの新鮮なフルーツ。避難所ではなかなかマンゴーは手に入らないからね。ありがたいことに地元のフードバンクから大量の果物の寄付があるから、それを箱ごともってきて毎日配っている」

 コミュニティに密着したレストランのシェフであるナヴァラさんの元には、地元民からの寄付である食材が大量に集まってくるのだ。

 店のロゴでもあるガイコツ柄のイラストが印刷されたライトバンで被災地に向かうと、メキシコ料理を心待ちにしている人たちが列を作る。

「水のボトルもランチと一緒に配っているんだけど、それだけじゃ味気ないなと思い、ある日、甘いジュースを自分たちで買って試しに配ってみた」と言うのはスタッフのひとり、ミンディ・ヘンダーソンさんだ。

 すると大人気で「この甘い味がずっと恋しかった!」と避難民の人たちから大喜びされたそうだ。

「家や仕事を失って、どん底にいる人たちも、温かい食事を手渡すと、ポツポツといろんなことを話してくれるんだ。家族のこととか、これからどうしようかとか」とナヴァラさんは言う。