エネルギー動乱Photo:123RF

2025年2月、日本で第7次エネルギー基本計画(エネ基)が閣議決定された。実は、それは25年1月にドナルド・トランプ氏が米国の第47代大統領に就任したことと密接に連動している。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、この二つの事象が密接に連動していることを表す、エネ基に盛り込まれた「アレンジ」について解説する。また、このアレンジによって、重要となるエネルギー源を明らかにし、国内の電力大手やガス大手などへの影響にも言及する。(国際大学学長 橘川武郎)

密接に連動する二つの事象
トランプ米大統領再登場と第7次エネ基

 2025年1月20日、返り咲きを果たしたドナルド・トランプ氏が、米国の第47代大統領に就任した。第2次トランプ政権は、発足直後に気候変動対策を進める国際的な枠組みであるパリ協定からの米国の離脱を宣言し、国内でも、ジョー・バイデン前大統領が進めていた電気自動車や再生可能エネルギー(再エネ)への奨励策を矢継ぎ早に廃止して、代わりに天然ガスや石油などの化石燃料の生産・輸出を促進する政策を次々と打ち出している。

 それから約1カ月後の2月18日、日本では、第7次エネルギー基本計画(エネ基)が閣議決定された。

 ここで注目すべきは、トランプ大統領再登場と第7次エネ基とが、密接に連動していることである。

 第7次エネ基の策定作業は、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会(基本政策分科会)の場で24年5月から進められたが、同年11月までは、具体的な計画案が示されることはなかった。

 ところが、24年12月になると、事務局を務める資源エネルギー庁から具体案が提示され、基本政策分科会の承認を得たのち、パブリックコメントを経て、25年2月には、ほぼ原案通りの形で、瞬く間に第7次エネ基が閣議決定された。それは、あたかも24年11月5日に行われた米大統領選挙の結果を待ち受けていたかのような事態の進展であった。

 このような事実経過は、トランプ氏再登場という米大統領選挙の結果が、第7次エネ基の内容に少なからぬ影響を及ぼしたことを示唆している。