エネルギー動乱Photo:PIXTA

「1キロワットアワー(kWh)当たり100円」。2026年3月、京都フュージョニアリングの小西哲之会長CEOが示したこの数値は、エネルギー業界に衝撃を与えた。既存電力の実に「約10倍」という異例の高コストだが、小西氏は「この初号機こそが、日本の停滞を打ち破る転換点になる」と言い切る。技術の力で海水から無限のエネルギーを創出する核融合は、かつて「実用化は常に50年先」とやゆされてきたが、民間スタートアップの手で今、現実の時間軸に引き戻されつつある。資源依存からの脱却、産業再編、脱炭素の決定打――。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、資源なき国・日本が「エネルギー輸出大国」へと転じる、その逆転のシナリオについて小西会長に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 金山隆一)

核融合は「技術でつくるエネルギー」
世界的に投資が加速

――核融合とはどのようなエネルギーであり、なぜ今、改めて注目されているのでしょうか。

 核融合は、太陽の中で起きている反応と同様、原子核同士が結合する際に生じる非常に大きなエネルギーを利用する技術です。燃料となる重水素は海水中に豊富に含まれており、理論的にはほぼ無尽蔵といえます。重要なのは、これが「資源のエネルギー」ではなく「技術でつくるエネルギー」であるという点です。

 これまでの石油やガスといった化石燃料の時代は、資源を保有する国が圧倒的な優位性を持っていました。しかし核融合は、技術力さえあれば、場所を選ばずにエネルギーを生み出せる可能性があります。加えて、現在はカーボンバジェット(温室効果ガスの排出上限)という制約があり、「エネルギー需要は増えているが、二酸化炭素(CO2)は排出できない」という深刻な矛盾に直面しています。その解決策の一つとして、世界中で核融合への投資が加速しています。

――「あと10年」といわれ続けてきた核融合ですが、本当に実現に近づいているのですか。

 正直に言えば、10年後に「もう少し時間が必要です」と頭を下げる可能性がゼロではありません。ただし、これまで実現に至らなかった理由の多くは技術そのものではなく、資金が継続的に投入されなかったためです。今回は資金調達の仕組みも構築しており、少なくとも設計や研究開発、建設のフェーズについては明確な見通しを立てています。「予算不足」を遅延の理由にするつもりはありません。

 技術面においても、困難なポイントはすでに整理されており、段階的な試行と検証によって解決していく計画になっています。多少の遅れはあり得るかもしれませんが、本質的に不可能な技術ではないと考えています。

――初号機の発電コストが1キロワットアワー(kWh)=100円はかなり高コストですが、この試算の意味をどのように捉えていますか。

「1kWh=100円」という驚愕の高コストは一見、経済性を無視したかのようだが、その裏には既存のエネルギーに対する常識を根底から覆す「逆転のシナリオ」が隠されていた。核融合は単なる発電手段にとどまらず、産業構造を塗り替え、資源なき国・日本を「エネルギー輸出大国」へと変貌させるポテンシャルを秘めていると、小西氏は言う。その真意と核融合の本質について、次ページで明かしてもらった。