欧州の状況を見てみましょう(下図参照)。
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財務省の「主要国における給与所得者を対象とした概算控除の概要」やコンサルティング会社PwCのレポート(2024年12月)によると、ドイツでは年収にかかわらず定額で年間約19万9000円が控除額とされています。その額は日本の55万円から195万円よりかなり低くなっています。交通費、調査、書類作成、ビジネス食事などが経費として認められていますが、会社がこれらを払った場合は除きます。また、約19万9000円を超えた経費がある場合は、申請し認められた場合は控除される仕組みとなっています。
PwCのレポート(2023年9月)によると、フランスでも給与としての収入が850万円までの人は、控除額が日本よりはるかに少なくなっています。
交通費、ビジネスでの食事、調査や書類作成などの認められた経費があれば、所得の10%程度が控除されますが、実際に発生した経費を全て申請して控除する方法を選択することもできます。
日本の給与所得控除でも、55万円の給与所得控除額だったものが、給与としての収入が増えて850万円以上になると、給与所得控除は195万円に増えます。実は、これはフランスよりも控除額が多く設定されています。フランスの場合は、かなり給与収入が高くならなければ、日本よりも控除額が多くなることはありません。
日本では給与収入が162万5000円までの場合は、給与所得控除額が55万円ですが、給与収入が180万円まで、360万円まで、660万円までと6段階に区分されています。給与収入が増えるのに応じて給与所得控除額も増加します。そして、850万円を超えると給与所得控除額は195万円となり、上限になります。
日本では、給与所得控除で
「経費」をまかなう便利な仕組みになっている
これは、会社員の給与が増えると経費が増えるということを前提に、控除額を増やしているわけです(下図参照)。
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会社に勤務している人の場合、本来、その経費は会社が払うべきなのですが、経費があまりに多いと会社は申請に手間がかかるため、一定額を給与所得控除するという便利な仕組みになっています。
自営業やフリーランスは経費で落とせる分があるため、条件を揃えるべく会社員にも控除が必要だという考え方もありますが、しかし、それらは本来は会社に申請し、会社が払うべきものという考え方もできるでしょう。