京都であれば、伏見稲荷大社、金閣寺、清水寺がずば抜けて人気です。が、私としては四国に行ってもらいたい。徳島県の祖谷(いや)、香川県高松市の栗林公園(りつりんこうえん)など、素晴らしい場所がたくさんあります。
四国と言えばなにより、お遍路も魅力的です。お遍路は、一部の外国人には知られているけれど、実際にお遍路をした外国人はまだ多くない。お遍路についての本は英語で結構出ているし、専門のガイドもいますが。
――四国に対して、外国人観光客からすると遠方なイメージがあるのでしょうか。
離れていると感じるでしょうね。それに九州と比べて、規模が小さいでしょう。
でも、直島(香川県)はベネッセの「アートアイランド」として世界的にも有名で、外国人がいっぱい来ています。直島からフェリーで高松市にも行けますが、実際に行く外国人は少ない。ちょっと惜しいというか、あと一歩なのに、その仕組みがツアーではできていません。
私が日本文化と芸術に興味のある人を案内する場合、直島に行ったら、必ず祖谷にも連れて行きます。祖谷の荒削りの自然環境、岩や滝に、外国人は「これが日本の原風景なんだ」と気づくわけです。栗林公園の大名庭園にも連れて行きます。日本のメジャーな公園の中でも、絶景だと思います。
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――『観光亡国論』(清野由美との共著、中公新書ラクレ)では、「トヨタ自動車と匹敵する観光産業の可能性」を述べていますが、どういう意味ですか。
日本はバブル崩壊後30年間も経済が停滞していますが、日本の産業別に「外貨収入」の面で見ると、観光業は自動車産業と半導体産業に次いで発展しています。
振り返れば1990年代までは、日本では政治家も経済学者も、観光業は「貧乏な国がやればいい」という考えで軽視されていました。しかし、当時からすでにニューヨークやロンドンなど、世界の大都市は観光業のシェアが大きかった。日本は今、やっとそのことに気付いたのです。
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