まずは英語を基礎から徹底的に見直そうと思い、毎日4時間ぐらい勉強しました。大学2年のときにはTOEICで700点を超え、4年生のときには800点を超えるレベルになっていました。一般的にいわれる大学院の入試レベルのハードルは越えると言われている水準です。
一方で、記憶力を競うメモリースポーツに目覚めたのは大学2年のときです。たまたまテレビでメモリースポーツの世界大会の特集を見ていて、チャンピオンの話を聞いたのがきっかけです。記憶力にはあまり生まれつきの才能は関係なく、練習量が重要になるという内容でした。
私はもともと暗記が得意ではなく、大学受験もそれが大きな敗因だと考えていたので、暗記に対してはイヤな記憶がありました。しかし、チャンピオンのその話を聞き、自分もできるかもしれないと思うとともに、単純にメモリースポーツが楽しそうに思えたのです。
そこから記憶力を高めるために、一生懸命練習し始めました。大学院の受験勉強にも応用できるだろうという思惑もありました。
こうして大学院進学を目指して勉強していたのですが、実は大学卒業後は大学院には進みませんでした。
就職活動の時期になり、少し迷いが生じたのです。実は子どもの頃から絵本の読み聞かせをしてもらっていたり、家にも本がたくさんある環境で育ち、大学時代には毎月10冊ほど本を読んでいたこともあり、本にかかわる仕事に興味がありました。
リーマンショック直後の就職氷河期の時期でもあったので、出版社にまとを絞って就職活動をし、ダメなら大学院に進もうと決めました。幸いにも『ぐりとぐら』などの絵本で有名な福音館書店という出版社から内定をもらえたので、就職する道を選びました。
仕事は営業職で、やりがいがあり、楽しく充実していました。ただ、頭の片隅には常に大学院の夢も残っていました。働き始めて7年たち、30代をどのように過ごすか、自分のキャリアデザインを考えたときに、このまま会社勤めをしていてもさらなる成長は難しいと感じるようになりました。
それならば自分の得意とするメモリースポーツで起業できないかと思い、そのためには脳科学を専門的に学んで、記憶に対してアカデミックなアプローチが必要だと考えました。