いまシリコンバレーをはじめ、世界で「ストイシズム」の教えが爆発的に広がっている。日本でも、ストイックな生き方が身につく『STOIC 人生の教科書ストイシズム』(ブリタニー・ポラット著、花塚恵訳)がついに刊行。佐藤優氏が「大きな理想を獲得するには禁欲が必要だ。この逆説の神髄をつかんだ者が勝利する」と評する一冊だ。同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)

【心が弱ったら】メンタルが一瞬で「完全無欠」になるすごい一言・ベスト1Photo: Adobe Stock

締め切り直前の自分はすごい

 あなたは夏休みの宿題を早めに終わらせていたタイプだろうか、それともギリギリに仕上げていたタイプだろうか。私は後者だ。

 夏休みが始まったときは余裕だと思っていたのに、なぜか毎年気づいたときには始業式が目前に迫っている。

 やばい、さすがにもうやばい。ものすごい勢いでドリルをこなし、自由研究の仕上げに取りかかる。このときのエネルギーは、普段の100倍くらいだ。いつもこのくらいできていれば、ノーベル賞も夢じゃなかったかもしれない。

 ギリギリ間に合う。これに味を占めると、「締め切り直前の自分」に期待するようになる。

 大人になって、仕事に関してはさすがにもう少し計画的に、締め切りから逆算して少しずつ進めるようになったが、「締め切り直前の自分」への期待は相変わらず強い。

 今日、なかなか調子が上がらなくても「締め切り前の私はすごいから、何とかするだろう」。

 そう思っている自分がいる。

 だが、ストイシズムの哲学者セネカが喝を入れてくれた。

いまを手に入れる

先延ばしほど人生を無駄にするものはない。
先延ばしは、一日がくるごとに人から一日を取り上げ、後からするという約束を盾に、いまを奪い去る。
生きていくことの最大の障害となるのが、明日を頼りにして今日を無駄にする期待だ。
……あなたは何を目指しているのか?
これからやってくることはすべてが不確実だ。
ただちに生きよ!
(セネカ『人生の短さについて』)
――『STOIC 人生の教科書ストイシズム』より

「ただちに生きよ!」

 なんとかっこいいのか。

 私の場合、「先延ばし癖」と「不必要なことをやる」ことがセットになっている。

 やるべき仕事であり、やりたい仕事が目の前にあるのに、その前にネットサーフィンをする、余計な心配をする、本をあっちからこっちに移動させるなどして先延ばしをしてしまう。その結果ギリギリになって、未来の自分に期待している。考えてみればおかしなことだ。

 未来に期待しても、未来は不確実。私が明日も同じように生きているという保証はない。「いまやる」、それしか確実なことはないのである。

「ただちに生きよ!」

 今日から、心が弱ったり、先延ばししそうになったりしている自分に気づいたら、このめちゃくちゃかっこいい言葉をかけることにする。

(本原稿は、ブリタニー・ポラット著『STOIC 人生の教科書ストイシズム』〈花塚恵訳〉に関連した書き下ろし記事です)