いまシリコンバレーをはじめ、世界で「ストイシズム」の教えが爆発的に広がっている。日本でも、ストイックな生き方が身につく『STOIC 人生の教科書ストイシズム』(ブリタニー・ポラット著、花塚恵訳)がついに刊行。佐藤優氏が「大きな理想を獲得するには禁欲が必要だ。この逆説の神髄をつかんだ者が勝利する」と評する一冊だ。同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)
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すべての人に好かれようとするとどうなる?
すべての人に好かれるなんてありえない、すべての人と友だちになることは不可能だ。だから、不可能なことを目指すのはやめなさい。そういうアドバイスをよく見かける。
価値観は人それぞれで、お互いに相反する意見を持っていたり譲れない主張があったりすることがある。そんな中で全員に好かれようとすれば、あちこちに矛盾が出て苦しむことになるのは目に見えている。自分の主張を曲げて相手に合わせるなど、無理を重ねることになるはずだ。自分を押し殺し続けても、幸せにはなれそうもない。
それでは、そういう無理を一切せずに、ありのままの自分でいながらすべての人に好かれようとするのはどうだろうか。
赤ちゃんならあり得る。赤ちゃんとはそういう存在だ。私もかつてはそうだった。
しかし、残念ながらほとんどの大人は赤ちゃんのようにはできない。ありのままの自分で主張をし続けたら、嫌われるのではないかという恐れがあるからだ。私を筆頭に、実際に嫌われた経験のある人も多いだろう。
結局、すべての人に好かれたいと思うと、苦しみが生まれてしまう。
だから、「無理なことは最初から目指すな」というのが現実的なアドバイスであるわけだが、あきらめきれない人も多いと思う。私も、頭ではわかっているがあきらめきれずにウジウジしているタイプである。知らない人にSNSで悪口を書かれると「なぜ…?」と考えてしまう。
では、ストイシズムではどういう考え方になるだろうか?
自分自身の友になる
「どんな成長を遂げたか、だと? わたしは自分自身の友になりはじめたのだ」
これは本当に素晴らしく有益なことだ。そのような人は、決して孤独になることがない。そのような人は、すべての人の友だと言えるだろう。(セネカ『ルキリウスに宛てた道徳書簡集』)
――『STOIC 人生の教科書ストイシズム』より
まず自分自身の友になれというのだ。目指すのはそっちだ。
自分自身の友となると、自動的にすべての人の友だと言える状態になるという。
自分を受け入れ、理解しようと努め、尊重してくれる友。どんなときも自分を信じ、応援してくれ、適切に距離を保ってくれる友。そんな友に自分がなれという。
そんな素晴らしい友がいる自分は、「認めてくれ! わかってくれ!」と承認欲求を爆発させたりこじらせたりすることもないだろう。自分自身を受け入れることは、他者を受け入れることにもつながるのだ。
たしかに、そんな人は「すべての人の友」と言っても間違いではなさそうだ。セネカよ、素晴らしい提案をありがとう。
「一番の友だちは自分です」とか「ある意味、みんな友だちです」と言うとイタイ奴だと思われるかもしれないが、そんなことはどうでもいい。どう思われてもかまわない。友である私自身がよく理解しているのだから。
(本原稿は、ブリタニー・ポラット著『STOIC 人生の教科書ストイシズム』〈花塚恵訳〉に関連した書き下ろし記事です)