
2024年5月以降、株価の調整が続く総合商社セクター。だが、2月には「バフェットの買い増し示唆」、4月3日には「三菱商事が巨額の自社株買いを発表」するなど底打ち感も台頭している。世界景気敏感セクターなだけにトランプ関税の影響は気になるが、果たして今から買うべき銘柄は何か。特集『反撃の日本株! 新時代の最強株&投資術』の#13では、最大の注目ポイントである「株主還元力」を中心に総合商社セクターの今後を分析した。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)
利益確定による売りは一巡
悪材料は織り込みつつある
2024年5月以降、総合商社の株価下落が止まらない。25年2月に、世界的投資家のウォーレン・バフェット氏の買い増し示唆でいったん反発したものの、トランプ関税による世界的パニックの影響もあり、再び株価は安値模索の展開になっているのだ。
野村證券の成田康浩アナリストは「総合商社の株価が調整しているのは『上昇した反動』もある」と指摘する。
20年以降、総合商社セクターは外国人投資家を中心に人気化して株価が大きく上昇した。だが、その買いが一巡したことで、株価がピークアウト。株価の上昇で配当利回りが低下していたこともあり、下落トレンドに転換以降は「売りが売りを呼ぶ展開」になっていたのだ。
とはいえ、総合商社の第3四半期決算は市場予想を上回る企業が多く、業績は悪くない。トランプ関税の影響により貿易ボリュームが落ちるリスクはあるが、関税影響によりインフレが再燃した場合は商社業績に追い風となるなどプラス影響となる面もある。
また、詳しくは次ページで解説するが、総合商社セクターは他業界と比較しても「株主還元」を強化しており、今まで堅調だったセクターと入れ替わりで注目される可能性もある。
大和証券の永野雅幸シニアアナリストも、総合商社の株価を左右するのは「第一に株主還元、第二に利益」だと解説する。
「総合商社の利益のピークは23年3月期だが、株価はそこから大きく上昇した。株主還元を強化してきたからだ。当然ながら、利益の動向も株主還元の持続性に関わるので重要だが、株主還元の継続的な拡大こそが株価上昇のドライバーとなる」(永野氏)
ビジネスマン垂ぜんの年収水準、難関大学からの就職人気度も高く人材がそろっている総合商社。かつても「商社不要論」など冬の時代を乗り越えて躍進を続けてきたが、再び高値奪還を狙える企業はどこか。
次ページでは各社のビジネスを分析しつつ、注目指標を分析。さらに逆風の中でも、底力発揮が期待できる企業や、新社長が説明した中期経営計画が「解像度が高く説得力がある」ことで期待感が大きい企業など、具体名を挙げて紹介する。