被害女性に「仕事をするな」と
言っているようなもの
こうした事件が起これば、被害女性に対してだけでなく職場環境の調査をするのも、企業としてまた当然のことです。ましてや、ジャニーズ問題以降、性加害が本人だけでなく所属する組織の問題であるということは、フジテレビの報道番組でも何度も取り上げられているはずです。にもかかわらず、関係者が「被害」を受けたのに中居氏を調査もせず、ずっと番組に出し続けていたことになります。
これは被害女性の心情を考えれば、「会社に出社したくなくなる」、つまり「退社したくなる」ような気持ちにさせる行為です。なにしろ、中居氏によりPTSDを発症したとすれば、会社や職場、あるいは映像で彼を見るだけでも、大きなストレスを被る可能性があるからです。
フジテレビの怠慢な対応の結果、被害女性は自分で精神疾患の治療を受け、そして自分で弁護士を探したといいます。自分で探したということは、業務上受けた被害に対して賠償を求める費用を自分で負担したことになります。文春とフジテレビでは企業の規模が全然違いますが、メディアに関わる会社にとって、報道やエンタメの現場を守る思想も法律も、違うはずはありません。
そして私は、フジテレビの港浩一社長の今回の件に関するコメントを読んで、仰天しました。中居氏のコメントが出た直後の1月10日、港社長は全社員に向けて以下のようなメールを送信しました。
「職務に誠実に対応していた人が悪く書かれることは本当に残念」「社長として全力で皆さんを守ります」「社員を守る温かい会社でありたい」
この「全力で守る社員」とは誰を指しているのでしょうか。少なくとも被害女性はもう社員ではないはずです。彼女の周囲で飲み会などをセットして、タレントを接待するのが仕事だという慣習を押しつけてきた社員を守るとしか、読めない文面です。
その上で「昨年より我が社は外部の弁護士を入れて事実確認の調査をしており、さらに進めていきます」とし、「今こそ、我々は意識改革を行い、会社全体が変わっていかなければなりません」「コンプライアンスをさらに徹底し、ひとりひとりが存分に能力を発揮できる、働きやすい環境づくりにも努めていきます」と述べた上で、中居騒動の影響で“意識改革プロジェクト”がスタートしたと報告しています。