
マンション管理の裏の裏まで精通したマンション管理士4人が、管理の実態を語る座談会の下編。特集『それでも買う!狂乱の市場に克つ! マンション 最強の売買&管理術』(全33回)の#29のテーマは、管理業界でも普及が進む外部管理者方式と約25年ぶりの大型改正となる区分所有法について。現場で実務と向き合う管理士ならではのここだけの話が続々と飛び出した。(聞き手/ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
●應田治彦(はるぶー) @haruboo0
マンション管理士。RJC48代表。都内大規模管理組合の理事16年目。
●大浦智志 @Office_Oura
税理士&マンション管理士。
●中村優介(黒ひつじ) @fournirnakamura
自主管理支援のフルニール代表取締役。マンション管理士。
●覆面マンション管理士O
謎のマンション管理士。4月26日に高円寺Pundit’でのイベントに出演。
管理費値上げが無理?だったら掃除も植栽手入れも電球替えも
全部自分たちでやるしかないんですよ?
――修繕積立金不足や物価高騰による管理費値上げに、管理組合はどう対応すればいいんでしょう。
中村 今よほどの世捨て人じゃない限り、全てにおいて物価上昇が起こってるってみんな知ってますよね。今が最後の値上げチャンスですよ。組合の中でも「値上げが必要」って言ってくれた人を守らなきゃ。
はるぶー ちなみに、管理費と修繕積立金の上がり方は、今一般に2~3%といわれている物価上昇率の倍以上のスピードで上がるんですよ。10年前から契約している管理員さんを最低賃金に近い安値で雇っていたりすると、いきなり4割値上げとかになる。これは正当な値上げなんですが、それが分かる人は管理組合の中には少ないです。
大浦 「じゃあ、これまでに集めた修繕積立金を運用して物価上昇に備えますか」となりがちだけど、積立金を物価上昇率と同じ利率で運用することは不可能なんですよね。管理組合が利用できるのは低リスク運用だから。
中村 都市部タワマンは「管理費や修繕積立金が値上げされても払える人が買ってくれ、払えない人は売って出ていってくれ」でいいですけど、地方ではそれはできない。長期修繕計画で必要となる金額が分かっても、修繕積立金の値上げはできない。払えずに売って出ていっても次の買い手がいない。であれば、掃除も植栽の手入れも自分で、電球交換も自分でやるなど、管理のグレードを落とすしかない。
大浦 地方では管理員も清掃員も置かないで、値上げをせずに生活防衛を優先するという判断もあると思うんです。ただ、都心でエントランスが汚くて子どもが共用施設を壊したままのマンションでいいんですか?資産価値上がりますか?このマンションに新しく住みたいという人出てきますか?っていう話ですよね。東京で管理グレードを守るためには、一定程度値上げを反映させないと持続可能性がないマンションになってしまう。ただ、その合意形成がなかなかできない。たぶん管理についても三極化が進んで、ほとんどの組合はゆでガエルになっちゃうんですよね。
激変する管理の現場で何が起こっているのか?管理業界にも影響が大きい外部管理者方式は実は悪用される可能性のある法の抜け穴があり、よからぬ参入者を招きかねないという。区分所有法の改正、そして普及しつつある管理適正評価制度の影響についてもメンバーが語った。