ドラマ『やまとなでしこ』を彷彿とさせる
松嶋菜々子のキラキラ感
登美子は「ここに来ちゃもういけないの」「おじさんのところに帰りなさい」
せっかく遠路はるばる歩いて訪ねて来た息子にこんな言葉。そもそも養子に出した千尋(平山正剛)にも平気で他人のふりができたのは、登美子は相当割り切った性分であるといえるだろう。そんな人が、じつにいい人そうな清(二宮和也)の妻だったと思うと、なんだかなあ……という気がしてしまった。
と、ここで、子どもがふたりいても、現役感バリバリで艶やかな登美子を堂々と演じる松嶋菜々子の過去作『やまとなでしこ』が思い出された。これも『あんぱん』の脚本家・中園ミホ作品だ。四半世紀前の2000年のドラマだが最近配信がはじまって注目されている。
『やまとなでしこ』の主人公・桜子は、お金持ちと結婚しようと合コンしまくっている。貧乏な家庭に生まれ育ったため、とにかくお金を欲しているのだ。相手を選ぶ基準はとにかくお金。
そんなあるとき、合コンの参加者に、馬主らしき人物・欧介(堤真一)がいて、さっそくロックオンする。ぱっと見は冴えないが、さりげなく胸元に馬主がもつピンを付けていることを桜子は見逃さなかった。
だが、このピンは欧介のものではなく、しかも医師だと職業を偽って合コンに参加していた。実は家業は町の鮮魚店。勉強ができて、純真な性格の欧介の内面に、桜子は次第に惹かれていくが、彼と結婚したら倒産寸前の鮮魚店の妻になってしまう。お金持ちと結婚する目的を捨てきれない桜子はどうする?というハラハラもするロマンチックラブコメディだ。
松嶋菜々子が演じる桜子は貪欲で、性格もいいとはいえないが、なぜか憎めない。欲望に真っ正直でキラキラしている。そんな彼女に欧介もどんどん惹かれていく。
『やまとなでしこ』を振り返ると、『あんぱん』の登美子は、もしかして桜子みたいな、純朴で知的な男性に惹かれるけれど、お金が大事な人なのかもしれないと妄想した。四半世紀過ぎて、ふたりの子どもの母役を演じるようになっても、松嶋菜々子は変わらず生命力にあふれ輝いている。
松嶋菜々子のことばかり書いてしまった。『あんぱん』に戻ろう。