ただし、発表前後にアマゾンの在庫が完売したのは事実である。これを「転売ヤーが買い占めた」と見ることも可能だが、前述のようにMicroSD Expressはもともと供給が少ない製品である。善良なファンが購入しただけで、在庫が枯れた可能性も十分にある。アマゾン側で品切れ状態の商品をマーケットプレイス業者が高値で出品することは、別にMicroSD Expressに限った話ではない。
そもそも、アマゾンは商品到着から30日以内であれば自己都合でも返品が可能なのだから、仮に高値で売れないのであれば返品すればいいだけ。「商材にならなくて残念だ」と思うことはあれど、「大損した」ということはないだろう。
そして、フリマアプリのメルカリと、オークションサイトのYahoo!オークション(ヤフオク)を見ると「転売ヤーが大損していない」ということがよくわかる。
ニンテンドーダイレクトの発表以降、メルカリで落札されたMicroSD Expressはたったの4件。ヤフオクに至っては0件だ。そして、販売中のMicroSD Expressは4月8日現在でメルカリ0件、ヤフオク3件という状態で、定価を大幅に超えて出品されているものはない。
本当に転売ヤーの目論見が外れているのであれば、転売ヤーが「損切り」した商品が大量に出回っているはずだ。そうなっていないということは、転売ヤーはMicroSD Expressを買い占めていなかったか、まだ様子見の段階だった(もしくは買って返品したか)ということではないだろうか。
私は、MicroSD Expressで大損した転売ヤーはほぼいないと思っており、転売しようとした転売ヤーも、かなり少数だと思っている。にもかかわらずこれだけ転売ヤー叩きが横行するのは、それだけ転売ヤーが忌み嫌われていることに他ならないが、転売ヤーを憎むあまり大切なものを見失っている人も多いように思う。
この騒動を見て思い出すのが、いわゆる「感動ポルノ」だ。「感動ポルノ」 という言葉は、もともとオーストラリアのコメディアン・ジャーナリストであるステラ・ヤング氏が提唱した「インスピレーション・ポルノ」という概念が元になったものだ。ヤング氏は先天性の骨形成不全症であり、人生の大半を車椅子で過ごし、2014年に亡くなった。