本丸となるのは、日本版に大きな言語・地域制限をかけ、日本ユーザー限定で安価に本体を販売する戦略のほうだろう。

 海外でのSwitch 2の販売価格を見てみると、アメリカ版は449ドル(1ドル150円の場合、約6万7000円)、イギリス版は395.99ポンド(1ポンド190円の場合、約7万5000円)、韓国版は64万8000ウォン(1ウォン0.1円の場合、約6万5000円)となっており、従来のswitchよりも日本と海外での価格乖離が抑えられている。為替次第になるが、アメリカ・韓国版のほうが日本の多言語版よりも安い。

 そして、私が最大の「転売ヤー対策」だったと思うのは、多言語版モデルをマイニンテンドーストアの限定販売にしたことだ。

 全世界の人口を考えれば、最も需要のあるスイッチが多言語版モデルであることに疑いはないだろう。スイッチ本体で遊びたい人が多ければ、日本語版モデルの価格差にかかわらず多言語版モデルの需要は高まっていくものと思われる。

 多言語版モデルが家電量販店やゲームショップで販売された場合、免税で複数個を購入する外国人観光客や、ECサイトや電子マネーの各種キャンペーンを駆使して実質購入価格を下げる国内の転売ヤーによって、再度転売が起こっていたと考えられる。

 だがマイニンテンドーストアでの限定販売によって、転売ヤーが複数店舗・ECサイトをまわって本体を買いまわる行為を抑制できるうえ、実質購入価格を下げることも基本的にはできなくなる。仮に多言語版モデルの需要が過熱し、市場価格が定価を大きく上回ったとしてもマイニンテンドーストアで買える1台を転売するのがやっとだろう。

 ここまで転売ヤー対策を完璧に行い、自社を大事にする顧客を大切にする任天堂の販売戦略には、最大級の賛辞を贈りたい。
 
 だが、SNSの「任天堂の転売ヤー対策は完璧だ」という言説は、独り歩きしすぎている面もあると思っている。