8年も朝田家にいるヤムおんちゃん
演じる阿部サダヲと「昭和10年」の関連性

 こうしてのぶは嵩から渡されたたすきをかけて競走に潜り込む。「はちきんおのぶや」と注目を浴びる。健脚っぷりを発揮し、パンをくわえ、男子をごぼう抜きして、ゴールのテープを切った時ののぶの表情の明るさ。途中でパンは手に持っていたけれど。

 それを「がんばれ」とそっと見守る嵩。

 第11回も12回ものぶのアップで「つづく」になって、サービス、サービスー。たぶんまだ決勝戦が残っているとは思うが。

 さて。急にあんぱん追加をしたいと駆け込んできたのぶに、動じることなく店に出す用に作っていたあんぱんを「持ってけ」と言うヤムおんちゃん(阿部サダヲ)と「今日は店を閉める」とさっさと判断する羽多子(江口のりこ)。このふたりは実に頼もしい。

 8年もの間、時々旅をしながらも朝田家にずっといるヤムおんちゃん。演じている阿部サダヲとこの時代、昭和10年には関連性がある。

 ドラマ「不適切にもほどがある!」(TBS)で阿部が演じた主人公の小川市郎は1935年(昭和10年)10月生まれという設定であった。

 ヤムおんちゃんがパンを作っているこの時代、あの不適切な言動をしまくりながらも愛された小川市郎が生まれたと思うとひじょうに感慨深い。

 ちなみに、昭和10年、ラジオで国際放送が流れた年に生まれたのは、美輪明宏、大江健三郎、寺山修司、筑紫哲也、赤塚不二夫、蜷川幸雄、久世光彦、高畑勲、中川李枝子、小原乃梨子、肝付兼太等々……。日本の文化に大きな影響を与えた人たちがたくさん誕生した年なのである。

「パン取って終わりじゃなかった」今田美桜と北村匠海の朝が、尊すぎた。【あんぱん第12回レビュー】

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