
4月9日、トランプ政権は実施したばかりの相互関税を、報復を表明しなかった国に対しては90日間停止すると発表した。日本には安堵感も漂っているが、トランプ関税の影響は日本経済に雇用調整、インフレ鈍化といった形で及ぶことは避けられない。(SMBC日興証券 チーフ為替・外債ストラテジスト 野地 慎)
トランプ政権の相互関税は
90日間停止とはなったが…
4月2日にトランプ政権による相互関税政策が発表され、「中国は34%、EU(欧州連合)は20%、日本は24%の関税賦課へ」などの詳細が明らかになると、グローバル市場は一気にリスクオフ化した。
我が国がディールによる関税引き下げをもくろむ傍ら、中国が即座に報復関税を発表したため、トランプ政権は「報復の報復」を行う方針を示した。これに対し、さらに中国が9日に「米国製品の関税を84%に引き上げ」としたところが、ひとまずセリングクライマックスとなった。
それは、中国の報復関税発表後、トランプ政権が「報復しなかった国々に対する相互関税の一部を90日間停止する」としたためである。この発表がなされた4月9日にはナスダック総合指数が12%上昇し、S&P500も9.5%値上がりした。
下げ続ける株価と、政権周辺および米国民の批判を背景に、流石のトランプ大統領もいったん折れた形となったが、他方、中国に対する追加関税を145%に引き上げ、即時発動するとも発表されており、まだまだ予断を許さない。
石破政権が「トランプ関税」による経済への負のインパクトを緩和すべく、財政拡張を検討するとの報道も流れ始めたなか、我が国においては「一安心」との見方も増えた。ただ、90日間の関税停止の間の「ディール」が非常に重要となる公算が大きい。
次ページでは、トランプ関税が日本の景気ならびに金融政策にもたらす影響を検証する。