このタメ口の発言、もしかしたらそれほど失礼に感じないのではないでしょうか?
むしろ、素直な感情が飛び出してきた感じがして、好感や親しみが持てませんか?女性があえてタメ口をここで使うことで、男性のなわばりに飛び込んだ状態になっています。
ただし、20代女性から40代男性への発言は基本的に敬語のため、相手への配慮は伝わっているはずです。
「自分の感情」についてのタメ口は
本音のような印象を与える
ここで注目したいのは、このタメ口の発言が「自分の感情」について話されているということです。
タメ口は自分の素のことば、いわば「すっぴん」のことばです。このタメ口の発言によって、女性はあたかもオーケストラを見に行く仲間の集団に気持ちだけ先に飛び込んだ感じもします。
そのようなニュアンスを感じたのか、男性の方もその直後の発話で女性の感情を気持ちよく受け止めて、女性がオーケストラのコンサートに行くことを前提に「じゃ、チケット取りますね」と話を続けています。
しかし、仮にこの女性が男性の誘いに対して、THEYコード(編集部注/自分の心のなわばりの外側にいる人たちと話すときに使うことば)である敬語のまま「いいですね。私も行きたいです」という返事をしたとしましょう。
イントネーションがどのようなものかによっても多少異なりますが、タメ口バージョンで伝わってくる高揚感はなく、逆に社交辞令っぽく聞こえてしまいそうです。
そして、もし女性がこのようなTHEYコードの返事だったとしたら、男性の方も本当に行きたいのか意思を確かめるために「じゃあ、チケットを取りましょうか?」というような質問をしたりする必要がありそうです。下手したら、あと数回のやりとりが必要になる場合もあります。
そう考えると、この女性がタメ口で「行きたい、行きたい!」と、相手のなわばりに飛び込んできてくれたおかげで、男性もすんなりと「じゃ、チケット取りますね」と続けることができたわけです。
タメ口を有効的に使いたいときは
肯定的な発言に限定する
もうひとつ例を考えてみましょう。例えば、上司がちょっと普段とはテイストの違うネクタイをしていることに部下が気づいたというシチュエーションを想像してみてください。