天才集団を支える“余白の設計”

安斎 最後に、これと関連して「天才ばかりのチームは成立するのか?」というテーマにも触れておきます。

 たとえば、ビートルズのように、全員が尖っている天才集団。あるいは大学の研究室のように、1人ひとりが個人の探究テーマを持って動きつつも、ときどき共同研究が立ち上がるようなチーム。そうした“分散型の天才集団”は、たしかに存在します。

 問題は、それを企業内でどう運営するかです。

 たとえば売上や予算が紐づいていると、「誰がこの数字を持つのか?」という話になり、個性が衝突してしまう。

 個々の山の登り方(手段)に自由がないまま、山の頂上というゴール(目標)だけが共有されていると、自由な探究ができなくなってしまう。

 だからこそ、「山の登り方は自由にしていい」と明示するような、“余白”の設計が必要だと思います。

数字にはコミットしているけれど、どう登るかは任せられている」――そんな構造が用意されていれば、個性豊かなタレント集団であっても、組織として機能させることはできると思います。

安斎勇樹(あんざい・ゆうき)
株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO
1985年生まれ。東京都出身。東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。組織づくりを得意領域とする経営コンサルティングファーム「MIMIGURI(ミミグリ)」を創業。資生堂、シチズン、京セラ、三菱電機、キッコーマン、竹中工務店、東急などの大企業から、マネーフォワード、SmartHR、ANYCOLORなどのベンチャー企業に至るまで、計350社以上の組織づくりを支援してきた。また、文部科学省認定の研究機関として、学術的知見と現場の実践を架橋させながら、人と組織の創造性を高める「知の開発」にも力を入れている。ウェブメディア「CULTIBASE」編集長。東京大学大学院 情報学環 客員研究員。主な著書に『冒険する組織のつくりかた「軍事的世界観」を抜け出す5つの思考法』(テオリア)、『問いかけの作法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、共著に『問いのデザイン』(学芸出版社)、『リサーチ・ドリブン・イノベーション』(翔泳社)、『パラドックス思考』(ダイヤモンド社)、『チームレジリエンス』(JMAM)などがある。