容疑者への配慮が随所に
警察捜査のお手本が描かれる

 警察署では、ジェイミーのために看護師や当番弁護士が呼ばれてそれぞれの仕事をする。また、裸になっての身体検査では、「適切な大人」に選任された父親のエディが懸念を示し、それは受け入れられないものの、ジェイミーにとって最大限の配慮が取られていることがわかる。実際に検査を行う2人の男性捜査官以外は、女性の看護師も男性刑事も後ろを向いて、ジェイミーの体を見ないようにする。

 ここまで書いてわかるように、これはエンタメ作品でありながら、警察捜査についての教育・周知になっている。

 警察署内でどのような手順でことが行われるのか、取り調べにあたって警察が何をして良いのか、何をしていけないのかがわかる。実際にはイギリスでも違法な取り調べはあるだろうし、このような徹底した配慮がなされている場合ばかりではないかもしれない。しかしそのようなことが起こった場合に、「容疑者にも人権がある」と訴えるだけの知識がここには提示されている。

 検察による冤罪(でっちあげ)や、警察での高圧的な取り調べは日本でも問題になっている。日本で取り調べ時にどういった配慮をしているのかリアルに描こうとした場合、作品を作るための警察組織への事前取材自体がうまくいかなさそうである。「アドレセンス」を見て、「日本でもきっとこのぐらいの配慮はしてくれているだろう」と思える人はほぼいないのではないか。

 このドラマがイギリスで大きな反響を呼んでいる中心的な理由は、3話のテーマである「ネット上のミソジニーによる青少年への影響」である。ここでは女性の法廷心理学者ブリオニーが、ジェイミーと少年院で対面する数十分がワンカットで撮影されている。

 成績優秀で受け答えも賢く、少年らしいあどけなさが残るジェイミーは、ブリオニーに対して次第に意図せずに本音を曝け出す。