イギリス社会が強く憂慮する
ネット上で煽られる「ミソジニー」 

 例えば、ジェイミーは「80対20の法則」を真理のように語る。これは80%の女性は上位20%の男性に引かれるという意味で、女性に選ばれない男性たちの被害者意識を顕著に感じさせる言葉である。

 ジェイミーは毎日のようにインターネットの中で情報収集し、彼のタイムラインはおそらく「80対20の法則」のような言葉でいっぱいである。彼は、女性たちは自分を醜いと見なして相手にしないし、女性に相手にされなければ自分は男として誰からも評価されないと思い込んでいる。

 ブリオニーからしてみればそれは真理でもなんでもない。まだ13歳のジェイミーの認知は著しく偏っていて、ブリオニーは頭を抱える。

 イギリスの内務省は昨年、過激なミソジニーを「過激主義の一形態」として扱う方針を示した。この背景には、若い男性たちがインターネット上で女性嫌悪を煽られ、直接的な加害行為に及ぶ事件さえ起こっている事実がある。

 このような社会的状況を憂慮した上で製作されたのが「アドレセンス」だが、日本ではこの「ミソジニーによる加害行為」や「ネット上のミソジニーによる青少年への影響」は、一部で問題視されてはいるものの、マスメディアが切り込むほどの社会問題とはなっていない。

「アドレセンス」を見ても対岸の火事と捉える人の方が多いかもしれない。しかし日本でも、毎日のように「でも女性は下方婚(年収や社会的地位が低い相手と結婚すること)しませんよね?」といった書き込みを見続けている10代はいるはずだ。

「アドレセンス」は4話ごとにテーマが異なり、今回紹介した1話目(未成年容疑者への取り調べ)、3話目(オンライン上のミソジニーが青少年に与える影響)の他に、2話ではSNSによる10代への影響、4話目では加害者家族への偏見と攻撃が扱われている。

 それぞれが日本でも議論されるべきテーマであることは間違いない。ドラマのラストシーンには英国社会の反省が込められていると感じたが、これは見る人によって違うかもしれない。いずれにせよ、今こそ多くの人に見てほしい作品である。