100人近くの部下から、「残す人間」を20分で選べと…

部下は100人近くもいるんだぞ? なのに、残す人間を20分で選べというのか。

部下の大半は5年とか、場合によっては10年もこの仕事をしているというのに。どうにも不出来なやつも何人かはいるし、いなければならないとまでは言えないやつもひとりふたりいることはいる。でも、それ以上は……。

「どのくらい減らさなければならないんだ?」

ケイヒルが口ごもる。ようやく出てきた言葉も、ほとんど意味のないものだった。具体的な数字は知らされていないのだろう。ただ、残したい部下、一人ひとりについて闘わなければならないという。爆弾も落ちてきた。

最高顧客責任者の退任――顧客を失い、収益の急降下は避けられない

「サラ・パーソネットがいなくなった」

最高顧客責任者が辞めたというのか。広告や営業にとっては大打撃だ。サラは、会社の窓口として最大手の広告主とつきあってきて、顧客の受けも評価もすごくよかったのだ。

悪いニュースが続く。ロビンと詳しい話をしたとき、最大手広告主の4分の1ほどが出稿をすべて保留にする模様だと言われたらしい。

部門を統括する経営幹部が切られ、さらに、おそらくは大幅な人員整理をこれからしなければならない。

これでは、奇跡でもなければ、収益ががっくり落ち込むことは避けられないだろう。

「なにも話すな、誰にも」

ふと気づくと、ジーナがこちらを見ていた。会話の半分しか聞こえていなくても、この夜が悲惨なことになろうとしているのはわかったはずだ。

ノートパソコンが車のトランクに入っているので、ケイヒルの言うスプレッドシートを作ることはできる。ただ、ダンスフロアは当面お預けとせざるをえない。

「マネージャークラスに話を伝えて……」

言いかけると、ケイヒルにさえぎられた。

「なにも話しちゃいけない。誰に対しても、だ。私からの連絡も、この件が終わるまではないと思ってくれ」

そんなばかな。ケイヒルとは10年の長いつきあいだし、これほどの大騒動なのに話をしないというのはありえない。

ケイヒルの説明は、なぞめいていた。

パラグらは理由ある解雇となるわけで、管理職なら同じ憂き目にあう可能性がある、だから、マスクチームにはっきり求められた以外の会話はしないように注意したいというのだ。

マークは体が震えるのを感じた。ケープのせいですごく暑いというのに。

(本稿は『Breaking Twitter』から本文を一部抜粋、再編集したものです)