「日本の農業がいま成り立たなくなろうとしているわけよね。いまこそ大量に大増産して余計なものは輸出していく。そして国内の需給は安定させていく」(ABS秋田放送 2月20日)

 ただ、そんな政策の転換が簡単にできないというのが「変わらない国・日本」だ。最大のネックは、これまで減反政策にマジメに従い、生産量を落としてきた「兼業農家」をどうすべきか、ということだ。

「稼げる農家を手厚く支える」という意味では、サラリーマンをしながらコメをつくるこれらの人々は除外されてしまう。しかし、これまで補助金でどうにか生産を維持してきたので、それを打ち切られてしまったら「離農」するしかない。

 兼業農家票に支えられる自民党にこうした改革は決してできない。また、JAにとっても認められない。「農業+サラリーマン収入」という兼業農家の家計安定化によって成長したJAバンクの個人預金は、96兆円(2024年3月)となっている。

 こういうもろもろの「利権構造」を踏まえると、兼業農家へのバラマキも継続するしかない。つまり、もし日本が減反政策をやめて、コメの大増産に踏み切ると、これまでの減反政策に費やしていた補助金に追加する形でさらに莫大な補助金がかかってしまう。

 いわゆる「国の借金」が1200兆円を突破し、社会保障も137兆円とGDPの3割にまで膨張しているこの国で「コメ農家へのバラマキ倍増」を押し通すのは至難の技だ。

 そういう「霞ヶ関の事情」を前にすれば、農水省としては「現状維持」しかない。つまり、「50年に及ぶ減反政策の大失敗」だということは本人たちも自覚があるのだが、今更それを認めても補助金のバラマキを打ち切ることなどできない。つまり、叩かれるだけで何も変わらないのだ。だったら「コメは足りてます」と壊れたラジオのように繰り返し、これまで続けてきた減反政策をのらりくらりと続けていくしかない。詰将棋で言えば完全に「詰み」の状態なのだ。

 これが昨年夏から、農水省がその場しのぎの言い訳を繰り返している問題の根っこにある「病」だ。