サーキットでの人馬一体感を突き詰めすぎた
F:鏡面道路での人馬一体感を突き詰めすぎてしまった。滑らかなところでは最高だった。つまりは初期のR35 GT-Rのような。
柴:初期のGT-R。そうかもしれません。
F:あれも散々言われました。富士スピードウェイのようなサーキットでは良いけれども、一般道では跳ねる。ストリートでは怖くて飛ばせない、と。
柴:人馬一体。今思えば、そこを突き詰めようとする思いが強過ぎたのかもしれません。
F:人馬一体はマツダの命。
柴:やはりそこがこのクルマのポイントであることは間違いない。だから足回りのセッティングを変えたからと言って、決して「考え方をガラッと変えました」とか、「もう人馬一体はやめました」という意味ではないんです。そこはご理解ください。
F:初期型から比べるとバネを柔らかくしてダンパーを硬くした。それにより跳ねが収まり、乗り心地が良くなった。実にめでたい事なのですが、一方で失ったものもあるはずです。失ったことは何でしょう。
柴:厳密に言うと、ロールは大きくなりますね。
F:物理的にそうなりますよね。バネを柔らかくすれば絶対にロール量は増える。当たり前ですよね。要はそれに乗る客がどう感じるのか。
柴:そうですね。シャープさという点では、ロールが抑えられている分、前の方がシャープだったと感じられる方もいなくはないです。
F:「前の方が良かった」、という声はありませんか? 前のほうがクイックで気持ちよかったという客もいるでしょう。
柴:おられます。もちろん一部のお客様からはそういう声もあるし、私もそれはそれであっていいと思っています。本当に初期型がいいと思ってくださっているお客様は間違いなく一定数おられますし、その方々の感覚は決して間違っていないと思います。初期型には初期型の良さがあるので。