企業が選考で重視する
「ROI」の考え方
ひと口に「すぐに辞めてしまいそうな人」と言っても、2つのパターンがあります。、1つは「成長意欲が高く優秀で、その会社で一定以上の成果を出し、学べることがなくなったら機会を求めて転職していく人」、もう1つは「ROI(投資収益率)の低い人」です。
前者は、たとえ数年で会社を去るとしても在籍期間中に会社に利益や変革をもたらすので、むしろ企業から歓迎されることが多い、転職強者です。一方、後者はその逆。高い採用コストを費やして採用しても、会社に利益をもたらさなかったり、特に若手は活躍するまでに時間がかかったりする(=ROIが低い)こともあります。本稿で取り上げるのは後者、「ROIが低いうえにすぐに転職しそうな人」です。
転職した人が新しい環境で活躍するようになるには、それなりの時間がかかるのが一般的です。会社から見ると活躍する前、あるいは活躍し始めて間もないうちに辞めてしまう人は、採用や教育にかけた費用が回収できないので「ROIが悪い」となります。営利組織である企業でROIが悪そうだとなれば、採用を見送る方向に判断が傾くのは当然です。
費用の回収にかかる期間はそれぞれの企業や事業で異なり、入社したその日から売り上げが上がるようなシンプルな商品を扱っている事業であれば、3カ月いてくれるだけで費用は回収できるかもしれません。
逆にさまざまな知識が必要になる複雑な商品であれば、戦力化できるまで2年くらいかかる場合もあります。このような事業では、1年で退職されたら費用は回収できず赤字です。
転職した人の経過を観察していると、多くの会社では中途採用者が独り立ちして戦力化され、売り上げや利益に貢献できるようになるまでには半年から1年くらいかかっています。そうなると入社1年で辞めますと言われると、投資効率は非常に悪い。だから企業は「すぐ辞めそうな人」を敬遠するのです。