ここでは、優秀なプロジェクトマネジャー(PM)のAさんの暗黙知をあぶり出すときの例で考えてみましょう。
「AさんとほかのPMとのいちばんの違いはどこにあると思いますか?」
「Aさんから見たとき、同じPMであるBさんのやり方にもったいないと感じる点はありますか?」
「あのプロジェクトをもしAさんが引き継ぐことになったら、どこから手をつけますか?」
「Aさんが新人に指導するとき、伝えるのがいちばん難しい仕事はなんですか?」
「Aさんが初心者のパフォーマンスを見ていて、『えっ、これができないの!?』と驚いたことはありますか?」
「Aさんがいま新人の立場だったら、真っ先にまずなにをやりますか?」
「Aさんにとって3年前はできなかったけど、いまはできることってありますか?」
「なぜできるようになったのですか?」
「3年前の自分にアドバイスするとしたら、どういう伝え方をしますか?」
「Aさんは今回こう対応されていましたけど、あのときのケースも同じでしたか?」
「(違うとしたら)なぜ違う判断をしたんでしょうか?」
「これまででいちばん難しかったプロジェクトは?今回のプロジェクトとの違いはどこにありますか?」
暗黙知をあぶり出し、形式知化していくうえで忘れてはならないのは、暗黙知を共有してくれる人に対する敬意と称賛です。
そこで生まれた形式知が組織全体を進化させ、巡り巡って自身の成長にもつながることがわかれば、暗黙知を出し惜しみする人はいなくなります。

安斎勇樹 著