米国株の反発が持続しない理由Photo:Anna Moneymaker/gettyimages

 4月2日の「解放の日」以降の米国株の急落と反発について考えられる一つの見方は、それ以前は投資家が10%の関税を最悪のシナリオと考えていたが、その後は10%の関税を最良のシナリオと考えるようになったということだ。関税が予想を大幅に上回る規模だったために株価は下落し、その後、関税が先送りされ関税交渉が始まると株価は持ち直した。

 8日に発表された 米国と英国の通商協定の大枠 で明らかになったのは、10%の関税は適用されるが、それ以上にはならないということだ。これは貿易にとって、またスコッチウイスキーの愛飲家や両国の輸出業者にとって悪いニュースだ。

 10%の関税はまさに10ポイント高すぎる。だが株式市場が4月2日までに10%の関税をすでに織り込んでいたのであれば、市場の混乱を避けるためにドナルド・トランプ米大統領はディール(取引)に応じる可能性が高いと投資家が判断したことで、株価がその水準まで回復するのは理にかなっている。S&P500種指数は実際にそうなった。

 素晴らしい、という話ではない。S&P500種は2月の高値からまだ8%ほど低い水準にある。ただ株価はあるべき姿ではなく、これからどうなるかという予想を映し出す。見通しは悪いかもしれないが、「壊滅的」であるよりは「悪い」方がまだましだろう。