日経平均株価はついに1万5000円を突破。一部で高所恐怖症が広がっているようだが、昨今の株高の原因をアベノミクスだけに求めると、短期的なブームと勘違いしかねない。たとえ、安倍晋三首相、黒田東彦・日本銀行総裁が登場していなくても、ここまでの円安と株価上昇は(タイミングはもっと後にせよ)実現していた。

 円安については米国側の事情も見逃せない。昨年12月に米国が量的緩和の拡大を決めた時点で、マーケットは最後の緩和と判断。以来、いわゆる「出口論」に注目が集まっている。これまでは日銀が緩和しても米国のインパクトのほうが大きかったため、円高が進行してきた。米国の緩和が終了ならば、日銀が粛々と緩和を行うだけでも円安に転じるはずである。

 加えて、シェール革命。米国の貿易赤字のうち、約4割が石油と天然ガス。シェール革命によって国内需要を賄えれば、それが消えてなくなるのである。将来的には輸出によって残り6割の貿易赤字も縮小するかもしれない。

 為替レートは中期的には金融政策や金利の差、長期的には貿易収支や経常収支の差が大きな影響を及ぼす。その両者がドル高トレンドへの転換を示唆しているのである。シェール革命は何が革命かといえば、為替レートにとって革命的なのだろう。

 米国自動車産業の回復も追い風だ。円安批判の急先鋒は米議会を煽る米自動車ビッグ3である。しかし、ビッグ3の業績は好調。しかも、住宅市場の回復に伴いビッグ3が得意とする大型ピックアップトラックの需要も急回復となれば、円安批判も迫力に欠ける。

 日経平均1万5000円の株価水準は、現状の為替レートを基にした業績予想からは全く割高感のない水準である。つまり、株式市場は円安を追いかけるのに精一杯で、安倍政権が繰り出す「3本の矢」のうち、1本目の金融政策しか織り込んでいないことになる。