
蘭子は“何かが起きる”
シーソーの空き地へ
夜になってもメイコが泣き続け、蘭子(河合優実)はいない。眠れなくて外に出ると、屋村(阿部サダヲ)が座っていた。彼は一貫してお国ためなんてことを認めていない。豪の死を名誉の死だなんて言いたくない。嫌みっぽく「愛国の先生」とのぶに言って去っていく。屋村が葬式にも出席しないのは、豪の死を崇めたくないからだろうか。
葬式に、兵隊ごっこ好きの子どもがふたりやってくる。3人じゃないのはなぜ!というのはさておき。
「お国のためにご奉公したい」とたどたどしい言葉ながら真剣に言う子どもたち。蘭子はぷいっと席を立つ。のぶは、子どもたちに来てくれてありがとうと言うしかない。
テロップが入ったのはこの瞬間であった。
席を立った蘭子は、シーソーのある空き地にやって来る。ここは子どもの遊び場であると同時に、石屋の石が置いている場所でもあるようで、蘭子は豪のことを思い出す。
ある夏の日、ここで鼻緒が切れて、豪にすげ替えてもらった。それが恋のはじまり? 嬉しそうな恥じらいのような蘭子の表情が初々しい。
嵩役の北村匠海が以前、インタビューで空き地に注目してほしいと語っていた。
やっぱり空き地では何かが起きるのだ。
蘭子を心配したのぶが空き地にやって来る。
「うちは悔しうてたまらん」と言う蘭子に、のぶは蘭子や家族や国のために命をかけて闘ったのだから「立派」だと言ってあげなさいと促すしかない。ここでののぶはどこか迷っているように見える。本気でそう思っているのか、と蘭子に問われ、「そうながよ」と認めながら、のぶの心が揺れているのがわかるのは、そのたたずまいだ。
黒井先生(瀧内公美)のように凛として頑として立っていない。首にどこか迷いが見えるのだ。それは蘭子の哀しみがあまりに深く、揺らがざるを得ないからだろうか。今田美桜はかなり大変なところを背負っている。彼女が主役たる意味はそこにあるだろう。
河合優実は、本日公開のインタビューで、第38回はとくに印象に残っていると語っている。
豪への思いが実って至福だったときから、豪の死を知って一気に下降した感情の乱高下をみごとに演じた河合優実のインタビューもご一読いただきたい。