タルタル増量したけど、信用は激減

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セブンの「人気商品増量祭」がもたらした感情は失望だけではない。もう一つ、企業にとって致命的な影響を及ぼす感情がある。それが「後悔」である。
「ファミマにしておけばよかった」「ローソンのほうが満足できた」という声は表に出にくいが、購買行動そのものに直接反映される。これは“静かな離脱”であり、企業にとって最も恐るべき反応である。同研究では、「後悔」が顧客の乗り換え行動につながることを示している。
《後悔は、サービス提供者の乗り換え傾向に直接的な影響を与える。顧客は『間違った選択をした』と感じ、自分の失敗を修正したくなる》
つまり、セブンのタルタル増量や枝豆7倍といった“演出に偏った増量”は、派手さだけを追い、顧客の実感を置き去りにした。
その結果、派手さと満足度が一致したローソン、ボリュームの分かりやすさで評価されたファミリーマートに対して、「セブンを選んで失敗した」と顧客が感じ、静かに流出している。表立ったクレームよりも、無言の離脱の方が、企業にとってははるかに深刻なダメージである。
本来、価格据え置きで量を増やす施策は、感謝と信頼を得るための手段だったはずだ。だが、期待をあおっただけで内容が伴わなければ、逆効果に転じる。タルタルが増えた分、信頼は減ってしまったのだ。
もう「タルタルソースだけ増やして終わり」の時代ではない。顧客が感じるのは、量ではなく誠意である。セブンが次に“本当に増やす”べきなのは、商品の中身ではなく、期待に応える力そのものである。
セブンの担当者たちは、インフレが重くのしかかる昨今にあって、「増量」という言葉に着目したのだろうが、国民の最たる関心事項は「お米価格の高騰が続いている」ことだ。生活者にとって主食のコスト増は、パンや麺とは異なる切実さを伴う。
だが、コンビニ業界ではこの窮地に正面から応えた戦略は乏しい。目立つのはスイーツや揚げ物の増量セールやドリンク無料クーポン。たしかに一時的な話題にはなるが、国民の最も深刻な実感とずれたキャンペーンは、やがて飽きられる運命にある。
今、もし創業者である鈴木敏文氏がセブンを率いていたらどうしていただろうか。