初代、第2世代とは社会状況がまったく違う

 電池容量は、52.9kWh(グレード名:B5)と75.1kWh(B7)の2種類。日本仕様B7では、満充電で600km以上走れる。

 充電効率も上がった。出力150kWで急速充電した場合、バッテリー温度が25℃の状態でSOC(ステート・オブ・チャージ)が10%からの航続距離回復量は、15分充電で約250kmに達する。

 モーター性能は、B5が最高出力130kW・最大トルク345Nmで、B7が160kW・355Nm。ともにFWD(前輪駆動車)である。

 車体については、「アリア」をベースに改良しているため、サスペンションは第2世代のトーションビームからマルチリンクに変わった。これにより、第2世代に比べて縦方向の剛性を28%低減できた。車両バランスを最適にして、長距離や悪路での快適な乗り味と静粛性でドライバーの疲れも低減しているという。

新型リーフが車体を共有する、「アリア」の技術カットモデル新型リーフが車体を共有する、「アリア」の技術カットモデル Photo by Kenji Momota

 さて、ここからは「新型リーフは日産の事業再生に向けた切り札か?」という観点で話を進めていく。

 直近での日産に関する話題といえば、一部報道で神奈川県追浜(おっぱま)工場や日産車体湘南工場の閉鎖に関するニュースがあり、それぞれの地域住民、関係各企業、そして地方自治体が今度の動向を見守っているところだ。

 このニュースの真偽は現時点で不明だが、ホンダとの経営統合が白紙に戻り、イヴァン・エスピノーサ新社長体制となった日産が、本格的な事業再編を進めていることは間違いない。

 6月24日には株主総会を控えており、その1週間前の新型リーフのワールドプレミアは、日産の次世代に向けたキックオフともいえる。

 ただし、これをもって「経営再建の切り札」とか「救世主」と表現するのは、筆者として少々違和感がある。

 なぜならば、EV市場は今、初期普及期から本格普及期に向かう中で「踊り場」に差し掛かっているからだ。

 時計の針を少し戻すと、初代リーフが登場した2010年前半、大手自動車メーカーとしてEVを大量生産したのは、世界で日産と三菱自動車の2社のみだった。筆者は、両社のEV参入プロセスについて、技術的な観点のみならず、産業界・財界・政界での水面下の動きを含めて当時、詳しく取材している。

 その上で、リーフと三菱の「i-MiEV」は両社にとっての救世主であり、また切り札であったといえる。自動車産業界において、まさにエポックメイキングだった。