「アリア」と「サクラ」の中間なので、大幅な値上げは考えにくい

 次に、第2世代リーフが登場した2017年は、世界のEV市場に大きな変動が起こり始めていたタイミングだった。

 紆余曲折を経て、米テスラが「モデル3」量産によってEV市場のけん引役としてその地位を確立した。また、COP21のパリ協定を基盤とした、欧州連合の欧州グリーンディール政策が引き金となり、米中を巻き込んだEGS投資が急速に広まり始めていたころでもある。

 ESG投資とは、従来の財務情報だけではなく、環境、ソーシャル(社会性)、ガバナンスを重視した投資を指す。10年代後半から20年代前半にかけて、グローバルでESG投資バブルが起こり、その中でEVの存在価値も急変していった。多様な競合モデルが登場し、第2世代リーフの存在感が結果的に薄れたといえる。

 そうした中、日産は満を持してEVラインアップの強化に動いた。上級モデル「アリア」と日本におけるエントリーモデル「サクラ」の登場だ。

 このようなEV市場の変遷を鑑みると、第3世代リーフの商品企画の方向性を日産は設定し分かりやすかったといえるかもしれない。

 実際、新型リーフのチーフ・プロダクト・スペシャリストの遠藤慶至氏は、筆者の「新型におけるポジショニング」に関する質問に対して「価格を含めて、アリアとサクラの中間」という発想から始まっていることを明らかにした。

日産グローバル本社での展示風景。手前が第2世代「リーフ」、奥が「サクラ」日産グローバル本社での展示風景。手前が第2世代「リーフ」、奥が「サクラ」 Photo by K.M.

 グローバルでのEVマーケット規模で見れば、リーフはボリュームゾーンへの対応が求められることは変わりなく、競合他社の動きを考えればさらに厳しいコスト管理と商品としての刷新感の両立が必要だ。

 そのため、車体は前述のようにアリアを基本として、またモーターや制御系については日本では次期「エルグランド」を筆頭に搭載予定の第3世代e-POWERとの共通性を持たせて、量産効果を上げた。

 車内体験の領域では、調光パノラミックガラスルーフを日産として初採用したり、「スカイライン」で導入実績がある市街地で前車との距離を管理するインテリジェント・ディスタンス・コントロールをEVとして初採用していたりしている。

 気になる日本仕様の価格について、今回は未発表だった。ただし、繰り返すが商品のポジショニングとしては、アリアとサクラの中間であるため、走行性能や充電性能が大きく向上しても、第2世代の価格から大きく上昇するとは考えにくい。

 新型リーフの開発陣は、開発方針を「新たなEVのスタンダードを目指した」と表現する。

 これからも新型リーフについて日産から情報開示があるタイミングで、さまざまな角度からリポートしていきたい。