行政手続きのオンライン化は5%から82%へ

 東京都は、都政の構造改革ポータルサイト「#シン・トセイ」上で、定期的にデジタル化の進捗を公表している。

「#シン・トセイダッシュボード」は、Microsoft Power BIを活用している「#シン・トセイダッシュボード」は、Microsoft Power BIを活用している(提供:東京都) 拡大画像表示

 最新の2024年度第4半期時点で、コピー用紙は2016年度比70%削減、FAXは2019年度比99%削減を達成した。オンライン会議は日常となり、生成AIの活用も始まっている。宮坂氏は、「16万人の都職員が無線LANやクラウドを使って仕事ができる環境に、今年ようやくこぎつけた」と明かす。

 都民生活に直結する行政手続きのデジタル化も進展があった。2020年にはわずか5%だったオンライン手続きが、2024年12月末には82%まで拡大した。窓口満足度は、5段階評価で3.8である。

 宮坂氏は、こうした変化の背景に、公務員と技術者の協働があると言う。象徴的な事例が、豊洲などの市場での食品安全検査業務のデジタル化である。食品市場衛生検査を担当する都職員は、食べてはいけない魚を見分ける重要な仕事を行っている。しかし全ての魚を熟知しているわけではなく、判断に迷う場面も多い。

 従来は分厚い魚の図鑑を持参し、不明な場合は事務所まで走って戻り、ベテラン職員に確認するという非効率を強いられていた。そこに技術者が加わり、タブレット端末上で全ての検査用図鑑、データベース、過去の事例が閲覧できるようになった。

 宮坂氏は「行政のデジタル化というと役所の窓口をイメージしがちだが、それは行政の仕事のごく一部。改善すべきことの多くは、こうしたエッセンシャルワーカーの現場にある」と語る。