宮坂氏は、内製化を訴える一方で、従来の調達も否定してはいない。「BuyからBuildへ」と表現しながらも、実際に目指すのは「BuyとBuildの二刀流」である。

全てを内製化したいわけではなく、全てを手の内化したいということだと思われる。 Photo by M.S.全てを内製化したいわけではなく、全てを手の内化したいということだと思われる Photo by M.S.

「システムを調達することは、これからも残る重要な手法である。ただ、このやり方もレベルを上げたい。『よく分からないから全部お願いします』ではなく、『全部分かっているよ。パートナーとして高いレベルで一緒に仕事をしましょう』というレベルに生まれ変わりたい」と語る。

 つまり、調達の質を向上させつつ、適切な案件は内製で対応するという戦略的な使い分けを目指している。

 講演の最後に、宮坂氏は会場にこう呼びかけた。

「この中から1人でもいいので、都庁やGovTech東京に来てくれたら本当にうれしい。行政って実は広い世界です。日本のGDPの約4割が行政の支出です。民間の6割の世界でしのぎを削っていらっしゃると思いますが、隣には巨大なバカでかい4割の山がほとんど未着手で残っている。ここにはキャリアとしても非常に面白い可能性がある」

 行政に来て初めて見えた現実がある。民間企業は基本的に、お金を払ってくださるお客さまのために仕事をする。一方行政は、時にはお金が払えないような本当に困っている人たちのためにある。

「1400万人が暮らす東京では、実にたくさんの人が、しんどい中で生きている。子育てで大変な目にあいながらも一生懸命に頑張っている。行政って何のためにあるの、そういう人たちのためですよ。給料が上がるかは分かりません。私は激減しました。だけど、やりがいはめちゃくちゃあると言えます。これ以上の仕事があるかと自信を持って言えるからです。ずっとやる必要はない。長い職業人生の中で、たった数年でも構わない。自分が培った技術力で、困っている人を助けるという選択肢を、今日をきっかけに持ってもらえれば」と締めくくった。