保護者の「時間が欲しい」に応えた保活・子育てDX
子育て支援分野の改善も顕著だ。2016年のいわゆる「保育園落ちた日本死ね!!」で広くその課題が認知された保育園探し(保活)。従来は保育園の情報収集、電話での見学予約、区市への申請という煩雑な手続きが必要だった。
宮坂氏が保護者との対話で最も印象に残ったのが、「私たちが一番欲しいのは時間」という声だった。「行政は最近いろんな制度や補助などよくやってくれていると思う。ただ、私たちが何より欲しいのは時間。とにかく忙しいと。できる限り早くデジタル化する必要があると痛感した」(宮坂氏)
この声に応える形で、オンラインで条件を指定して保育園を検索し、見学申請から最終申請までワンストップで完結できるシステムを構築した。ユーザーからは、「一度にいろんな保育園の情報が見れるので、いちいち園のHPを見に行かなくていいし、空き枠が年齢ごとの表になっていて見やすい」「オンライン見学予約は電話の手間がなくて楽だし、保育園が空いている時間に縛られなくていいのが良い」といった声が寄せられているという。
「行政の仕事は、民間のように売り上げという分かりやすい評価がない。こういう声を聞けたとき、ほんとにやって良かったと思う」(宮坂氏)
また、都内在住の0歳から18歳までの子どもを対象に、所得制限を設けず一人当たり月額5000円を支給する「018サポート」では、当初10分以内に手続きを完了できる人がわずか7%しかいなかった。これも技術者が作り直すことで、70%の人が10分以内で完了できるまで改善した。「まさに大事な時間を返す仕事である」(宮坂氏)
1100万都民の手のひらに都庁を届ける「東京都公式アプリ」
現在、宮坂氏が最も力を入れているのが、2025年2月に一部のサービスからリリースした「東京都公式アプリ」だ。今やスマートフォンにはメディア、EC、決済、エンターテインメントなどあらゆるサービスが組み込まれているが、行政サービスだけが取り残されている。
宮坂氏は「スマートフォンの中に都庁や区市町村をお引越しする」と表現し、1100万人の都民の手のひらに行政サービスを届ける構想を描く。