需要ショックか供給ショックか
コメの価格上昇の原因としては、需要ショックと供給ショックがあり得る。図3の左図は、需要曲線が右にシフトすることにより、コメの値段が上がる、需要ショックの状況を表している。
例えば、地震でコメを備蓄しておきたいと考える家計が増えれば需要曲線の右シフトが起きる。2011年の東日本大震災の際も食料や乾電池などに対する備蓄需要が増え、価格が上昇した。また、パンデミック初期の2020年春にもマスクなどに対する需要が増え、価格上昇が起きた。
これに対して、図3の右図は供給曲線が上にシフトすることによりコメの値段が上がる、供給ショックの状況を表している。例えば、コメの不作に伴う供給減といった理由で起きる現象である。農水省によれば、2024年のコメの作況指数は「平年並み」の101であり、この数値が正しければ、供給ショックの可能性はない。
しかし、農水省の作況指数の精度は必ずしも高くないとの指摘がある。コメ価格上昇の背後に供給ショックがある可能性は否定できない。
需要ショックでも供給ショックでも価格は上昇するので、価格だけを見ていたのではどちらなのか識別できない。識別のカギを握るのは価格ではなく数量だ。需要ショックであれば価格が上がると同時に数量も増える(図3の左図)。需要が旺盛なので価格が少々高くても人々は大量に購入するということだ。一方、供給ショックであれば価格は上がるが数量は減る(図3の右図)。人々の需要に変化がない中で、不作などの要因で供給が絞られると価格が上昇し、その価格上昇に反応して人々が買い控えるということだ。
では、識別のカギとなる数量は増えたのか、減ったのか。