
キャリアや年齢に関係なく
他者の才能から学ぼうとする
――「鬼平犯科帳」の最新第6弾「暗剣白梅香」では、早乙女太一さんと共演されています。早乙女さんは13歳の時に幸四郎さんの舞台を見て、それ以来「憧れの人でヒーロー」と言っています。
幸四郎:私こそ早乙女さんを尊敬しています。今作で言えば、やはり殺陣に関する部分が中心になります。これは本当に、早乙女さん以上の存在はいないのではないかと感じています。そして、できるだけ多くの方に、彼の技術と存在のすばらしさを知っていただきたいと思っています。
もちろん、すでに広く知られた俳優でいらっしゃることは承知していますが、それにしても私自身、「自分は彼のことをあまりにも知らなかった」と痛感したくらいです。「こんなにも優れた表現者が日本にいたのか」と驚かされたのです。そのくらいの存在だと私は思っています。ですから、座長という立場で彼とご一緒できたことは、私にとっても非常に光栄なことです。
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「仕事がつまらない」と感じたとき、それは仕事そのものではなく、自分の向き合い方に問題があるのかもしれない。松本幸四郎は、香りのような非言語的な要素にまでこだわることで、自らの集中力を研ぎ澄まし、役という仕事に深く没入する。答えのない世界で常に探求を続け、キャリアや年齢に関係なく他者の才能から学ぼうとする謙虚な姿勢。そのプロフェッショナルな仕事術は、日々の業務に新たな面白さと深みをもたらすための、普遍的なヒントに満ちている。