もっとも、金先物価格は2023年12月以降、狭いレンジで推移しています。ハマスとイスラエルの衝突、それ以前から続いているロシア・ウクライナ戦争はまだ終わりが見えない状況です。この状況を金価格の動きを通して説明すると、世界の投資家は「この2つの衝突、戦争はこれ以上深刻化しない=いま以上に不穏な動きとはならない」と考えていることが推測できます。
ハマスとイスラエルの衝突が、イランとイスラエルの直接交戦につながり、さらには、「第五次中東戦争」に発展すると、金は買われる可能性が高いでしょう。
また、第二次トランプ政権による米国の政治状況も金価格に影響すると思われます。世界の安全保障に関するものだからです。要は、「トランプ政権の動き自体が地政学的リスク」と言うことができるのです。
このように、金取引では、金価格を通して世界の「不穏な動き」の状況を知ることができる一方、さまざまな「不穏な動き」に関するニュースが金価格に影響します。
国内外の経済情勢、政治状況、地政学的な情報など、さまざまなことに対してアンテナを張る必要があります。
電子部品向け需要が高まっても
金価格への影響は限定的
ほかに、金価格は需給の増減によって上下します。需要の約半分は宝飾品向けで、2割が各国の中央銀行による購入、2割が投資(投機)、残りの1割弱が電子部品です。前出の金の国際調査機関WGCによると、2010年代以降、各国の中央銀行による買いが増えています。また、中国やインドなどの経済成長によって、富裕層や中所得者層が増えていることも、金の需要増加につながっているようです。

金の宝飾品を身につけることはステータスになる側面があり、中国やインドでもその傾向があることから、今後、金の需要が大幅に減ることはないでしょう。したがって需給面では、金価格の大幅な下落をあまり心配する必要はなさそうです。電子部品向けは1割弱と比率が低いので、どれだけ需要が高まっても、金価格への影響は限定的と思われます。
金価格の動向のカギを握っているのは、やはり「不穏なこと(地政学的リスク)」なのです。