地球誕生から何十億年もの間、この星はあまりにも過酷だった。激しく波立つ海、火山の噴火、大気の絶えまない変化。生命はあらゆる困難に直面しながら絶滅と進化を繰り返した。ホモ・サピエンスの拡散に至るまで生命はしぶとく生き続けてきた。「地球の誕生」から「サピエンスの絶滅、生命の絶滅」まで全歴史を一冊に凝縮した『超圧縮 地球生物全史』は、その奇跡の物語を描き出す。生命38億年の歴史を超圧縮したサイエンス書として、ジャレド・ダイアモンド(『銃・病原菌・鉄』著者)から「著者は万華鏡のように変化する生命のあり方をエキサイティングに描きだす。全人類が楽しめる本だ!」など、世界の第一人者から推薦されている。本書の発刊を記念して、内容の一部を特別に公開する。

“巨大な星の死”から「太陽が生まれた」という衝撃の事実Photo: Adobe Stock

死にゆく星

 むかしむかし、巨大な星が死にかけていた。

 何百万年も燃えつづけたので、中心にある核融合炉の燃料が尽きてしまったのだ。

 この星は水素原子を融合してヘリウムをつくることで、輝くために必要なエネルギーを生み出していた。

 しかし、そのエネルギーは、星を輝かせるだけでなく、星が自らの重力で内側にひっぱられて、潰れてしまうのを防ぐためにも不可欠だった。

超新星の誕生

 水素が不足してくると、星はヘリウムを融合させて炭素や酸素などの重い元素をつくるようになった。でも、そのころには、もう星には燃やすものがなくなりつつあった。

 ついに燃料が底をつく日がやってきた。重力が戦いに勝ち、星は中心に向かって崩れるように潰れていった。何百万年も燃えつづけたのに、この崩壊はほんの一瞬だった。

 ある程度まで潰れると、星はどんどん高密度になって固くなり、外側に跳ね返った。これこそが、宇宙を照らし出すほどの大爆発、すなわち超新星の誕生だ。

重力衝撃波

 この星の惑星系に存在していたかもしれない生命体は、すべて消滅してしまったが、その死の激震は、新しい種の誕生でもあった。

 星が一生の最後の瞬間につくり出した、ケイ素やニッケル、硫黄、鉄などの、より重い元素が、爆発によって宇宙の広範囲にばらまかれたのだ。

 数百万年のち、超新星爆発による重力衝撃波は、ガスや塵や氷の雲(星間ガス雲)を通りぬけた。重力波によって伸びたり縮んだりした雲は、自分自身の内側へと潰れていった。

太陽の誕生

 雲は収縮しながら回転しはじめた。重力による内向きの力で、雲の中心部のガスが圧せられ、原子が融合しはじめた。水素原子同士が押しつけられてヘリウムになり、光と熱になった。

 こうして星の生命の輪が完成した。

 古代の星の死から、新たな星、すなわち、私たちの太陽が生まれた瞬間だ。

(本原稿は、ヘンリー・ジー著『超圧縮 地球生物全史』〈竹内薫訳〉からの抜粋です)