「やろうと決めたことがあるのに、すぐにダラけてしまう」――そんな自分に、もどかしさやストレスを感じていませんか?
勉強、仕事、筋トレ…やる気はあるのに先延ばししてしまう。多くの人が抱えるこの悩みに、心理学の視点から答えるのが、新刊『すぐやる人の頭の中──心理学で先延ばしをなくす』です。著者は、モチベーションの研究を専門とする筑波大学人間系教授・外山美樹氏。この記事では、同書の担当編集者が、「勉強中にスマホを触ってしまうクセ」を解決する心理学的アプローチを紹介します。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

勉強したいのに動画に手が…「見たくなる脳」を強制リセットするすごい方法Photo: Adobe Stock

「ちょっとだけ」のつもりが、1時間…

「さあ勉強しよう!」と思った矢先、つい動画を開いてしまう。スマホの通知に反応してSNSを見始めたら、いつの間にか1時間経っていた……。

 そんな経験、誰にでもあるのではないでしょうか。

 新刊『すぐやる人の頭の中』では、こうした誘惑への対処法として、「if-then形式で実行意図をつくる」という簡単なテクニックを紹介しています。

「if-then形式」の実行意図をつくる

 実行意図とは、目標を立てる際に、単に「勉強する」と決めるのではなく、「いつ、どこで、どのようにやるか」を決めることです。

 これを、シンプルな形式に落とし込んだのが、

「もし(if)〇〇したら、(then)△△を実行する」

 というif-then形式の計画です。

「勉強する」という目標に対しては、例えば「夕方18時になったら、席に着いて参考書を開く」「図書館に着いたら、スマホをオフにする」というようなif-then形式の計画を立てることができます。

 こうすることによって、目標の達成率が格段に上がることが、心理学の研究で明らかになっているのです。

誘惑に強くなる、シンプルな習慣

 本書によれば、このif-then形式の実行意図は、次のように変形することで、誘惑への対策に効果を発揮するようです。

「もし【誘惑】に出合ったら、【対処策】を実行する」

 例えば、「スマホを開きたくなったら、参考書を開いて集中する」といったような実行意図を作って、メモに書き残しておくことで、効果的に誘惑に対処できます。

 本書の中では、こんな心理学の研究が紹介されています。

『すぐやる人の頭の中──心理学で先延ばしをなくす』より抜粋

 

 参加者にパソコン上で課題をやってもらったのですが、面白そうなビデオクリップ(映画の本編からハイライトを切り取った動画)をパソコン画面の右上に小さく表示しました。

 

 課題を進めるためには、その魅惑的な妨害刺激をなるべく見ないようにすることが要求されます。

 

 その際、「私は気が散らないようにする」と単に目標を立てた人たちよりも、「気が散るものに直面したら、私はそれを無視する」、「気が散るものに直面したら、私は課題に集中する」という実行意図を形成した人たちのほうが、魅惑的な妨害刺激に惑わされることなく課題に集中して取り組んでいました。

 通知が来て、気が散ってしまう……よくありますよね。

 何の準備もせずに誘惑に立ち向かうのではなく、自分がつまずきやすい場面を想定し、「その時どう行動するか」を決めておくだけで、驚くほど違いが出ることが研究でも示されています。

 本書には、この他にも、先延ばしを防ぎ、自然と行動に移すための心理学的アプローチが多数紹介されています。

 ・やりたいことがあるのに、行動できない
 ・気が散って集中できない
 ・モチベーションが続かない

 こういった悩みに思い当たる人は、やる気で解決しようとせず、ぜひ一度、心理学に基づいた自分を動かす方法を取り入れてみるのはいかがでしょうか。