銀行・証券・信託 リテール営業の新序列#10Photo by Yasuo Katatae

金利上昇でリテール分野が再び脚光を浴びる中、りそなホールディングスはマイナス金利時代から「リテールNo.1」を掲げてきた。しかし、メガバンクが相次いで新サービスを投入し存在感を高める中で、その先行優位は揺らいでいる。潤沢な資本力で攻勢を強めるメガに対し、りそながよりどころとする武器は何か。特集『銀行・証券・信託 リテール営業の新序列』の#10では、定評のあるグループアプリ開発の舞台裏から、メガと対照的なリテール戦略の実像、そして新アプリのリリースに向けた課題を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

リテール攻勢強めるメガバンク
揺らぐ先行優位の座と対抗策は

 金利のある世界が到来するはるか以前から、リテール事業をグループ戦略の中心に据えてきた銀行がある。りそなホールディングス(HD)だ。

 2003年に注入された公的資金を15年6月に完済。その年から「リテールNo.1の実現」を掲げ、以降10年にわたってリテール領域に注力してきた。

 しかし今、その先行優位は揺らいでいる。メガバンク各社が国内の金利上昇を機にリテールを強化し、存在感を強めているからだ。

 三井住友フィナンシャルグループ(FG)が「Olive(オリーブ)」で先陣を切り、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)は25年6月に新サービスブランド「エムット」を立ち上げた。みずほフィナンシャルグループ(FG)も24年12月に「みずほ楽天カード」の提供を開始するなど協業施策で攻勢を強める。

 メガバンク関係者の間でも「リテール領域でりそなの存在感は薄れている」との見方が広がる。三井住友FGは法人向けの「Trunk(トランク)」を5月に投入し、7月にはみずほFGもUPSIDERホールディングスの買収を発表するなど、りそなが強みとしてきた中小企業領域を本格化させる。潤沢な資本力を背景にしたサービスの厚みやポイント還元、認知を広げるプロモーション力では、メガバンクに分があるのが実情だ。

 それでも、リテール領域を担当するメガバンク幹部の一人は「りそなのグループアプリはUI/UXが優れており、常に参考にしてきた」と打ち明ける。りそなHDでデジタル戦略を統括する川邉秀文執行役兼グループCDIOは「グループアプリは分かりやすさと使いやすさに徹底的にこだわり抜いてきた」と自信を示す。

 次ページでは、メガバンクも一目置くりそなのグループアプリ開発の舞台裏をたどりつつ、メガと対照的なりそなのリテール戦略の中身、そして次世代版アプリ「2.0」のリリースに向けて浮かび上がる課題に焦点を当てる。