億ション姉さんと喧嘩別れ…
別れ際に明かされた真実
あるとき、億ション姉さんが「全身が痛くてたまらない」と大粒の涙を流し始めた。
彼女の右足を見ると、誇張ではなく左足の倍近く、パンパンに腫れあがっている。吐き気も催しているようで、会話の途中で口を押えた彼女はトイレに駆け込み、嘔吐する音が聞こえてきた。
億ション姉さんは「こんな姿は見られたくないから、今日はもう帰って」と僕に伝えた。逃げるように、その場を離れた。
マンションの外に出ると、一台のタクシーが駐車していた。そういえば今日は大阪の病院に行く日だって言ってたっけ……。力になりたいと思った。例えばタクシーまで荷物を持ったり、車椅子を押すこともできるはずだ。合鍵を使って部屋に戻った。
女性「帰ってって言ったのに、なんで戻ってきたの?」
佐藤「いや、何か手伝えることがあれば、手伝いたいなって」
女性「ハッキリ言って迷惑です。早く帰って!」
このやり取りが、自分の中ですごくショックだった。迷惑だったのかもしれないけど、その言い方はさすがに酷いと思ったのだ。
結局、このやり取りをキッカケにLINEでの喧嘩に発展。最終的に僕の方から「もう会いたくないです」とメッセージを送った。
このとき、「最後だから言うけど、私の病気は末期ガンだった」という告白をされた。それまでは「心配させたくないから病気のことは言いたくない。持病だし、治る病気だから大丈夫」と言われていた。
病気の友達よりも
自分の生活を優先した
出会ったときから何となく、予感はあった。だけど本当の話かどうか分からなかった。億ション姉さんは、いつも美味しそうにご飯を食べていた。お酒だって普通に飲んでいた。
ちょうどこの頃、ブラック企業との裁判が大詰めを迎えていた。僕がウーバーの仕事を始めたキッカケはこれだった。
勤めていた運送会社ではサービス残業が恒常化しており、これに異議を申し立てたところ突如「クビ」を宣告された。不当解雇を求めて提訴した僕は、この裁判期間中の生活費を稼ぐ必要があった。
今自分の人生で最も優先すべきことは何なのかを考えた。たくさんの言い訳を並べながら、僕は彼女のことを一度忘れて、ウーバー配達員としての日常に埋もれることを選んだ。