海外展開を見据えたリブランディング

 店内に入って驚いたのは、照明の暗さだった。一般的に欧米の高級レストランやホテルでは、日本と比べて照度が低く、間接照明を用いて落ち着いた雰囲気を演出している。同店も部屋全体を明るくする蛍光灯を使わず、スポットライトで照らしていた。注文用タブレットでは、外国語対応が5カ国語となっていた。

あれ、ビッくらポン!がない…「プレミアムくら寿司」と「いつものくら寿司」の圧倒的な違い関東初出店のプレミアムくら寿司「無添蔵」中目黒店は、駅前のビル2階にある(筆者撮影)
あれ、ビッくらポン!がない…「プレミアムくら寿司」と「いつものくら寿司」の圧倒的な違いタブレットとは別に、ブックタイプのメニューもある(筆者撮影)

 既存ブランドを見直し、新たなブランドを再構築することをリブランド(Rebrand)という。つまり、中目黒店は関西店舗とは異なるブランド、リブランドした無添蔵と見るべきだ。しかもこれは、海外出店を見据えたくら寿司の新戦略だろうと判断できる。

 同社は中国本土の全店舗を閉店し、上海市の3店舗を順次閉めると報じられた。2023年に中国本土へ出店したが、後発で現地顧客をつかみきれず、原材料高も響いて採算が悪化していた。海外展開は同業他社に先行する米国と台湾に集中し、立て直しを急ぐとしている。もし無添蔵が日本人向けであれば、関西店舗と同様のフォーマットで良いはずだ。海外出店を目指し、顧客データを収集・分析している途上なのではないか。

ターゲットはファミリーではなくカップルやひとり客

 中目黒店の席数は全部で59席。内訳はボックス席が7ブース(4人席、計28席)、カウンター席が31席である。ボックス席には個々にロールカーテンがあり、個室空間を作れる仕様だ。通常店はグループ・ファミリー向けのボックス席がメインでカウンター席が少ないが、同店では席数が逆転している。ひとり客やカップル需要を狙っているのであろう。

あれ、ビッくらポン!がない…「プレミアムくら寿司」と「いつものくら寿司」の圧倒的な違い(左)ロールカーテンで個室風に仕切れるボックス席、(右)カウンター席(筆者撮影)
あれ、ビッくらポン!がない…「プレミアムくら寿司」と「いつものくら寿司」の圧倒的な違いカウンター席はひとり客向き(筆者撮影)

 価格帯も大きく異なる。通常店では110円(税別)がメインだが、同店では150円~1200円(「こぼれすぎいくら軍艦」単品の価格)まで幅広い価格帯となっていた。調査当日は、380円の価格帯が寿司では最も多いゾーンであった。

 また、獺祭などの日本酒やワインなど、アルコール類のラインアップも充実している。通常店ではアルコール類にそれほど力を入れていない。滞在時間が伸びて回転率が下がるからだ。一方、同店ではアルコール類を揃えることで単価アップにつなげている。通常店とは全く違うネタの種類であり、シャリの大きさも異なっていた。

あれ、ビッくらポン!がない…「プレミアムくら寿司」と「いつものくら寿司」の圧倒的な違い1200円のいくら軍艦やうにの殻盛りなど、単品でも高価格な皿がある。またアルコールのラインナップも豊富(筆者撮影)