教育・受験 最前線#14Photo:PIXTA

薬学部が苦境に陥り、学校法人の経営を一層厳しいものにしている。薬学部のある私立大学を運営する56学校法人のうち、12学校法人は直近5年間が全て赤字(経常収支差額)だ。連載『教育・受験 最前線』では、全国薬学部の実力と経営にランキングで切り込む「薬学部ランキング」を複数回にわたってお届けする。第4回は薬学部のある私立大学を運営する56学校法人を対象に、「稼げない大学」ランキングを作成した。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)

最も「稼いだ」のは帝京平成大学
では最も「稼げない」のは?

 受験人気に乗じて新設ラッシュや定員増が続いた全国の薬学部に今起こっているのは、ブーム終焉(しゅうえん)に伴う定員割れラッシュである(本連載『薬学部「入学定員割れ」ワーストランキング【全国私立60薬学部】2位は徳島文理大、1位は?』参照)。薬剤師が将来余るという推測もあって、薬学部バブルは崩壊した。

 学生が集まらなければ、収入の柱である入学金や授業料が集まらない。また、学生が集まらない大学に対して国はペナルティーを与えるため、国からの補助金・助成金をもらいにくい。薬学部不振は私立大学を運営する学校法人の経営を一層厳しいものにしている。

 薬学部のある私立大学を運営する学校法人の財務を見ると、企業でいう経常利益に当たる「経常収支差額」(経常収入-経常支出)が赤字になったのが2020年度は15学校法人で、24年度は24学校法人。年々赤字になる学校法人が増えている。

 そこでダイヤモンド編集部では、薬学部のある私立大学を運営する56学校法人を対象に、過去5年間の財務データに基づく「経常収支差額比率」ワーストランキングを作成した。経常収支差額比率(経常収支差額÷経常収入)は企業でいう売上高経常利益率に相当する「稼ぐ力」を測るもの。このワーストランキングということは、「稼げない大学ランキング」を意味する。

 ワーストランキング最下位、つまり最も稼ぐ力を持つ学校法人は帝京平成大学となった。これは薬学部うんぬんではなく、資産運用で大きく稼いだことによる。

 教育活動以外で稼いだり、大学以外の学校、あるいは薬学部以外の学部で稼いだりと、稼ぐ力は薬学部だけに頼るものではない。一方で、赤字が続く学校法人の多くは、定員割れした薬学部が全体の足を引っ張っている。学校法人の経営が厳しくなれば、薬学部の存続もいよいよ危うくなる。

 次ページでは、56学校法人の経常収支差額比率ワーストランキングを一挙公開する。5年間平均で赤字になったのは20学校法人。では最も「稼げない」のはどこか。「入学定員充足率」(入学者数÷入学定員)ワーストランキング通りの順位にはならない、学校法人経営の実情をつまびらかにした。