
私立大学の薬学部は新設ラッシュから一転、リストララッシュの時代に突入した。学生が集まらない薬学部は入学金や授業料も集まらず、教育の質を担保できなくなり、教育の質が低いと質の高い学生も資金もさらに集まらなくなるという、負のスパイラルに陥る。連載『教育・受験 最前線』では、全国薬学部の実力と経営にランキングで切り込む「薬学部ランキング」を複数回にわたってお届けする。第5回は全国私立57薬学部を対象に、「淘汰危険度」ランキングを作成した。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)
薬学部「淘汰危険度」ランキング
2位と6位は入学者募集を停止
兵庫県姫路市にある姫路獨協大学は2025年度以降、全国で初めて薬学部の入学者募集を停止した。福島県いわき市にある医療創生大学も26年度以降、薬学部の学生募集を停止する。薬学部の定員を削減する大学も後を絶たず、私立大学の薬学部は新設ラッシュから一転、リストララッシュの時代に突入した。
薬学部の募集停止は2大学にとどまらないだろう。ダイヤモンド編集部では、薬剤師を輩出する実力や経営状況から私立薬学部の「淘汰危険度」についてランキングを作成した。このランキングで姫路獨協大は2位、医療創生大は6位。この2大学のほかにも危険水域に入っている大学は複数ある。
06年に薬剤師を養成する薬学部が4年制から6年制になって以降、手に職をつけられる学部として受験人気を集め、薬学部の数や定員はどんどん増えた。しかしその後、薬剤師は将来過剰になるという見通しが広まり、また就職市場が売り手市場になると、薬学部志願者数は減少傾向に転じた。少子化が加速するのは分かり切っていた。にもかかわらず乱立した薬学部で定員割れが深刻化するのは自明の理だった(『薬学部「入学定員割れ」ワーストランキング【全国私立60薬学部】2位は徳島文理大、1位は?』参照)。
受験生が避ける薬学部(6年制)は、総じて留年者や退学者が多い(『薬学部「退学率」ランキング【全国私立57薬学部】3位医療創生33%、2位日本薬科36%、1位は?』参照)。また、6年間ストレートで薬剤師国家試験に合格する者が少ない(『薬学部「国家試験ストレート合格率」ランキング【全国私立57薬学部】3位慶應義塾、2位星薬科、1位とワーストは?』参照)。
受験生が集まらないと入学金や授業料などの収入がコストをまかなえる分だけ入らず、赤字経営に陥る(『薬学部バブル崩壊「稼げない大学」ランキング【薬学部を持つ私立56学校法人】ワースト3位は北陸大学、1位は?』参照)。学生も資金も足りなければ教育の質を担保できなくなるし、教育の質が低いと質の高い学生や資金がさらに集まらなくなるという、負のスパイラル。薬学部の淘汰は必至である。
次ページでは、過去5年間のデータに基づく私立57薬学部の淘汰危険度ランキングを一挙公開する。