国民1人当たりの豊さは韓国や台湾以下
相対的に貧しくなった日本人
経済規模ではなく、豊かさの指標としては、国民1人当たりのGDPが用いられます。こちらのほうが、その国で生活する人々の経済力を反映しています。
IMF(国際通貨基金)の統計(GLOBAL NOTE作成の資料による)によれば、2024年の日本の1人当たりGDPは世界38位で、OECD加盟38カ国、つまり先進国の中では24位です。アジア圏では、シンガポール、カタール、マカオ、香港、アラブ首長国連邦、韓国、台湾が日本よりも上位にランクされています。ちなみに1位はルクセンブルク、2位アイルランド、3位スイスとヨーロッパの小国が上位を寡占しています。
バブル経済を謳歌していたさなかの1990年、日本の1人当たりGDPは世界8位で、アメリカやイギリス、フランス、ドイツなど欧米の大国より上位にランクされていました。1990年代はバブル崩壊後の低成長にあえいでいましたが、それでも1人当たりGDPはおおむね上位5位以内で推移し2000年には2位までランクを上げました。
しかし21世紀に入った途端、ランクは急落し始めます。2003年には11位でトップ10の圏外となり、2000年代はおおむね10位台で推移しますが、2006年には22位と一時トップ20位圏からも脱落しました。
2010年代に入ると2013年に27位に沈んで以降、20位台の常連国となり、2020年代は20年23位、21年27位、22年35位、23年33位と、急速に順位を下降させています。つまり、日本人は相対的に貧しくなったということです。
これが、日本の現在地です。
日本の競争力は67カ国中38位
バブル期の4年連続世界一から急落
さらに深刻なデータがあります。ぼくの母校でもあるスイスのビジネススクール、「国際経営開発研究所(IMD)」が毎年公表している「世界競争力年鑑」のデータです。対象は67カ国・地域で、政府統計を中心とする164の統計指標と92のアンケート指標の計256の指標に基づいて、緻密に競争力が計算されており、年鑑に「世界競争力ランキング」が発表されます。
下図をご覧いただければ一目瞭然です。深刻です。IMDが世界競争力ランキングの発表を開始した1989年、日本は堂々の世界1位でした。バブル経済の絶頂期です。この年、日本に続いていたのは2位アメリカ、3位シンガポール、4位ドイツ、5位スウェーデンなどの国々でした。
日本は4年連続で首位を堅持しその後も上位を保ちましたが、バブル崩壊後の1997年に前年の4位から17位に急落して以降、2010年代はおおむね20位台に低迷します。そして、2019年に30位となった後、順位はさらに下降し2020年34位、21年31位、22年34位、23年35位と30位台に低迷し、2024年版ではさらに38位まで順位を下げました。40位台が目前です。
ちなみに2024年版のランキング1位はシンガポールで、以下、スイス、デンマーク、アイルランド、香港と続きます。先進主要国ではアメリカが12位、オーストラリア13位、中国14位、カナダ19位、韓国20位、ドイツ24位、イギリス28位、フランス31位などとなっています。ぼくが日本の経済力は自動車にたとえればファミリーカークラスと評価する理由がお分かりいただけるかと思います。
経営者の能力は世界ワースト3位
ビジネス効率性51位と低迷の深刻
世界競争力年鑑は、総合順位の他、「経済状況」「政府効率性」「ビジネス効率性」「インフラ」の四つの大分類、さらには各大分類に含まれる各5項目の小分類の順位も公表しています。
2024年版の日本のスコアは、経済状況21位、政府効率性42位、ビジネス効率性51位、インフラ23位です(下図参照)。
ぼくが特に深刻だと思うのは、ビジネス効率性の51位です。細かく見るとさらに戦慄が走ります。「生産性・効率性」は67カ国・地域の58位で、下から10番目です。
「経営プラクティス」の65位はさらに目を覆いたくなります。経営プラクティスの評価指標は企業の意思決定の迅速さや機会と脅威への対応力、起業家精神などとされています。つまり、経営者の能力ランキングです。これが下から3番目なんです。日本の経営者は無能や、といわれているのと同じです。
Key Visual by Kaoru Kurata,Kanako Onda