ジャニーズ帝国 最強ビジネスの終焉#2Photo by Masato Kato

ジャニーズ性加害の問題を巡り、ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)とのスポンサー契約を見直す企業が相次いでいる。今回の企業の動きに関して、元ネスレ日本社長の高岡浩三氏は「ジャニーズ問題で日本企業のガバナンス不全が改めて露呈した」と断じる。特集『ジャニーズ帝国 最強ビジネスの終焉』の#2では、高岡氏のインタビューをお届けする。(聞き手/ダイヤモンド編集部 下本菜実、名古屋和希)

ネスレは噂段階で取引を停止
ガバナンスは「社長の判断」

――「ネスレ時代はガバナンスとコンプライアンスの観点からジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)のタレントを起用しなかった」という発言が話題になりました。

 私がネスレ時代にジャニーズのタレントを起用しなかった背景には、ネスレの企業文化があります。

 17~18年前のことです。インドネシアで、チョコレートの製造に使われるパーム油の原料になる植物の農園で、業者がオランウータンのすむ森林を違法に伐採しているといううわさがありました。

 まだうわさの時点で、ネスレはその業者との取引をやめたのです。その後、環境保護団体が「植物の伐採でオランウータンが死んでいる」といったキャンペーンを展開したのですが、ネスレはすでに取引を停止していたので、そこまで大ごとにならずに済んだのです。

 やっぱりネスレはそこまでやるのかと思いましたし、そこまでやらないと痛い目に遭うこともあるのだと理解しました。

――ネスレでは、取引先との関係の在り方について定めた指針などがあるのでしょうか。

 そんなものはありません。全て社長の判断です。そもそも、ケース・バイ・ケースであることも多く、答えがあるものではないでしょう。ジャニーズのタレントを起用しなかったのも、トップとしての判断です。

――9月7日のジャニーズ事務所の記者会見をきっかけに企業は一斉に「契約を更新しない」といった対応を公表しました。

 今までは、広告代理店経由で散々タレントを起用してきたのに、手のひらを返したように、契約の見直しなどに動く企業を見ると、複雑な心境です。

 仮定の話になりますが、私がもしジャニーズのタレントを起用している会社の社長だったら、契約を継続します。タレントが加害者だったわけではないですから。

 実は、今回の問題は、日本企業がガバナンス不全に陥っているということを改めて示したということに尽きます。